外郎売って早口の呪文みたいなやつでしょ?
ちゃんと意味のある口上だよ。全文を見てみよう。
外郎売(ういろううり)は、江戸時代の歌舞伎役者・二代目市川團十郎が作った長台詞で、現在は声優・アナウンサー・俳優の発声練習の定番教材として使われています。
この記事では、全文(ふりがな付き)と現代語訳、由来、そして実際の練習のコツまでをまとめて紹介します。
外郎売とは?
歌舞伎十八番の演目としての由来



外郎売は、江戸時代の享保3年(1718年)に二代目市川團十郎が初めて演じた台詞劇です。
もとは独立した演目ではなく、歌舞伎の劇中に組み込まれた「早口言葉による雄弁術の披露」という趣向のひとつでした。
台詞は評判となり、江戸だけでなく京都・大阪にも伝わったと記録されています。
観客が先に台詞を言ってしまい、團十郎が逆から演じ返した逸話
寛保元年(1741年)、大阪の佐渡島長五郎座での上演では、團十郎が台詞を言い出す前に観客の方が先に「外郎売」を唱えてしまうという珍事が起きました。
團十郎はとっさに全ての台詞を逆から演じて観客を驚かせたと伝えられています。それだけ、当時から世間に浸透した台詞だったことがうかがえます。
なお「歌舞伎十八番」とは、市川團十郎家に代々伝わる当たり役18演目のことで、外郎売もそのひとつに数えられています(初演の詳しい経緯・選定の時期は後述の「由来をもっと深く知る」で解説します)。
「外郎(ういろう)」という薬の正体と
小田原とのつながり



外郎売の台詞は、「ういろう」という薬の効能を売り歩く商人の口上という体裁で書かれています。この「ういろう」、実はお菓子ではなく、中国から伝わった薬です。
外郎という中国渡来の薬の効能
台詞の中では、この薬を飲むと舌がよく回り、喉がすっきりして口の動きが良くなると説明されています。
制作の背景には、團十郎自身が喉の病で苦しんだ際にこの薬で回復し、感謝の意を込めて舞台で紹介したという逸話も伝わっています。
台詞の中で薬に「透頂香(とうちんこう)」という名前が登場します。
これは、冠の隙間から一粒取り出して用いたという逸話にちなみ、帝から賜った名という設定になっています。
「頂を透く香」と書いて「とうちんこう」と読む、という言葉遊びも仕込まれています。
なぜ小田原の名物として広まったのか



「ういろう」は小田原の外郎家が製造・販売していた薬です。
外郎家の先祖は永正元年(1504年)に京都から小田原へ移り住んだと伝わっており、以来この地で薬を商ってきました。
制作の経緯には2つの説があります。ひとつは、小田原で行商されていた「ういろう」の口上を團十郎が見聞きし、大きく手を加えずに歌舞伎に取り入れたという説。
もうひとつは、外郎家は店頭販売のみで行商は行っておらず、台詞・衣装のすべてが團十郎自身の創作だったという説です。
いずれの説でも、実在する薬「ういろう」が題材になっている点は共通しています。
台詞の中の「相州小田原」という一節は、この実在する薬とその産地を指しています。
お菓子の「ういろう」とは別物である点を押さえておくと、台詞の意味がぐっと理解しやすくなります。
なぜ声優・アナウンサーの
発声練習の定番になっているのか



なんで外郎売がこんなに特別なの?
五十音を練習できる構造だからだよ。
五十音の子音・母音がひと通り登場する構造
映画監督・脚本家の田中栄三は、昭和12年(1937年)に出版した「トーキー俳優読本」で外郎売を台詞の教材として紹介し、日活多摩川撮影所の演技研究所でも研究生の教材に採用しました。
田中は、作者の二代目市川團十郎が言葉を科学的に研究し、難しい言い回しを通して五十音図の各行を練習できるように構成していると評価しています。
発音・アクセント・テンポ・間の取り方・イントネーションなど、発声の基本技術を幅広く鍛えられる点が、単なる早口言葉との違いです。
外郎売は演劇・映画の研究所や養成所、アナウンサーの養成でも広く使われてきました。
TBSテレビの新人アナウンサーは、研修の一環として毎年、外郎売ゆかりの地である小田原の「ういろう」本店を訪れているといわれています。
外郎売への評価
研究者・実践者たちの声



坪内逍遥・千田是也らによる評価
外郎売を評価しているのは現場の実践者だけではありません。演劇研究者の坪内逍遥は、外郎売の台詞を、上方の演目「傾城買」と並ぶ「古今の二大難台詞」と評しました。
国語学者の日下部重太郎も、頭韻・脚韻を踏み、紛らわしい類語を連ねる早口言葉の要素をすべて含む集大成と評価しています。
演出家・俳優の千田是也は日本の早口言葉・舌もじり言葉の集大成として調音練習の教材に取り上げ、教育学者の齋藤孝も、音とテンポの面白さから「思わず言いたくなる台詞」と述べています。
「俳優やアナウンサーなら一度は練習する」教材、というのは決して大げさな表現ではなく、実際に業界で長く使われてきた実績に基づく評価です。
外郎売の全文【前半1】
口上の書き出し(ふりがな付き)



ここからは外郎売の全文を、場面ごとに分けて紹介します。今回の全文は、二代目市川團十郎の台本に基づく新字新仮名遣い表記を出典とし、読みやすさのために本サイトで場面ごとに区切っています。
まずは口上(自己紹介)の場面です。ふりがなを頼りに、声に出して読んでみてください。
拙者親方と申すは、お立ち合いの内に御存知のお方もござりましょうが、お江戸を発って二十里上方、相州小田原、一色町をお過ぎなされて、青物町を登りへお出でなさるれば、欄干橋虎屋藤右衛門、只今は剃髪致して、円斎と名乗りまする。元朝より大晦日まで、御手に入れまする此の薬は、昔、ちんの国の唐人、外郎という人、わが朝へ来たり、帝へ参内の折から、此の薬を深く籠め置き、用ゆる時は一粒ずつ、冠の隙間より取り出す。依って其の名を帝より、透頂香と賜る。
即ち文字には、頂、透く、香と書きて、とうちんこうと申す。只今は此の薬、殊の外世上に弘まり、方々に似看板を出し、イヤ小田原の、灰俵の、さん俵の、炭俵のと、色々に申せども、平仮名を以てういろうと致したは、親方円斎ばかり。若しやお立合の内に、熱海か塔の沢へ湯治にお出なさるるか、又は伊勢御参宮の折からは、必ず門違いなされまするな。
外郎売の全文【前半2】
外郎の効能(ふりがな付き)



続いて、外郎という薬の由来と効能を説明する場面です。
お登りならば右の方、お下りなれば左側、八方が八棟、表が三つ棟玉堂造、破風には菊に桐の薹の御紋を御赦免あって、系図正しき薬で御座る。イヤ最前より家名の自慢ばかり申しても、御存知ない方には、正身の胡椒の丸呑、白川夜船。さらば一粒食べかけて、その気味合をお目に懸けましょう。
先ず此の薬を、かように一粒舌の上へ乗せまして、腹内へ納めますると、イヤどうもいえぬは、いかん肺肝が健やかに成って、薫風咽より来り、口中微涼を生ずるが如し。魚、鳥、木の子、麺類の食い合わせ、其の外、万病速効あること神の如し。扨、此の薬、
【前半】現代語訳
口上・外郎の効能をやさしく解説



古い言い回しが多くて、正直よく分からなかった…
大丈夫、要点だけ現代語でおさらいしよう。
「拙者親方と申すは」から「円斎と名乗りまする」まで
「私は親方と申しまして、旅の道中でご存知の方もいるでしょうが、江戸を出て小田原の一色町を通り過ぎ、青物町を登った先で店を構える、虎屋藤右衛門、今は出家して円斎と名乗っております」という自己紹介の場面です。
話者は「ういろう」を売る商人・円斎で、これから薬の由来と効能を語る、という導入部分にあたります。言葉遊びよりも、まず状況設定を示す落ち着いたパートです。
「元朝より大晦日まで」から「万病速効あること神の如し」まで
「一年中お売りしているこの薬は、昔、中国から来た外郎という人がわが国に持ち込み、帝に献上したものです。その名を『透頂香(とうちんこう)』と賜りました」という薬の由来の説明が続きます。
続けて、一粒飲むだけで喉がすっきりし、口の動きが良くなり、あらゆる病に速く効く、という薬の効能を誇張気味に売り込む場面です。ここまでが、外郎売の「導入部」にあたります。
外郎売の全文【中盤1】
舌廻し「第一の奇妙」(ふりがな付き)



ここから、外郎売の中で最も有名な「舌廻し」の場面に入ります。「さて、この薬は」で始まり、薬の効き目を誇張する場面です。
意味が分かりにくい言葉が多く登場しますが、音を楽しむパートだと考えて読み進めてください。
第一の奇妙には、舌の廻ることが銭独楽が裸足で逃げる。ひょっと舌が廻り出すと、矢も楯も堪らぬじゃ。そりゃそりゃそりゃ、そりゃそりゃ、廻って来たわ、廻って来るわ。アワヤ咽、サタラナ舌に、カ牙サ歯音。ハマの二つは唇の軽重開口爽やかに、あかさたな、はまやらわ。
おこそとの、ほもよろを。一っぺぎへぎに、へぎほし、はじかみ。盆豆、盆米、盆牛蒡。摘蓼、摘豆、摘山椒。書写山の社僧正。
小米の生噛、小米の生噛、こん小米のこ生噛。繻子緋繻子、繻子繻珍。親も嘉兵衛、子も嘉兵衛、親嘉兵衛子嘉兵衛、子嘉兵衛親嘉兵衛。古栗の木の古切口。雨合羽が番合羽か。
外郎売の全文【中盤2】
五十音・語呂合わせ(ふりがな付き)



「あかさたな」の五十音や、語呂合わせの言葉遊びが連続する場面です。
貴様の脚絆も皮脚絆、我等が脚絆も皮脚絆。尻皮袴のしっ綻びを、三針針長にちょと縫て、縫てちょとぶん出せ。河原撫子野石竹。野良如来野良如来、三野良如来に六野良如来。一寸のお小仏に蹴躓きゃるな。
細溝に泥鰌にょろり。京の生鱈、奈良、生学鰹、ちょと四五貫目。お茶立ちょ、茶立ちょ、ちゃっと立ちょ、茶立ちょ。青竹茶筅でお茶ちゃと立ちゃ。来るわ来るわ何が来る、高野の山のおこけら小僧、狸百疋、箸百膳、天目百杯、棒八百本。
武具馬具、武具馬具、三武具馬具、合わせて武具馬具六武具馬具。菊栗、菊栗、三菊栗、合わせて菊栗六菊栗。麦ごみ、麦ごみ、三麦ごみ、合わせて麦ごみ六麦ごみ。あの
【中盤】現代語訳
舌廻し部分は「意味」より「音」を追う理由



「舌の廻ることが」から「はまやらわ」まで=五十音を鳴らす仕掛け
「この薬を飲むと、舌がよく回ることといったら、銭独楽(当時の玩具)が裸足で逃げ出すほどだ。舌が回りだすと矢も盾もたまらない」という、薬の効き目を誇張する場面です。
続く「あわや咽、さたらな舌に、か牙さ歯音」以降は、意味のある文章というより、「あかさたな、はまやらわ」の五十音を口の中で順番に鳴らすための音の配列です。ここは訳すというより、音の並びそのものを味わうパートだと考えてください。
「一っぺぎへぎに」から「菊栗」まで=語呂合わせの言葉遊び
「へぎ干し生姜」「盆豆・盆米・盆牛蒡」「摘み立て・摘み豆・摘み山椒」など、似た音の言葉を畳みかける言葉遊びが続きます。
「親も嘉兵衛、子も嘉兵衛」のような同音異義語・語呂合わせも、意味よりも音のリズムを楽しむために作られています。無理に一語一語を訳そうとせず、口の動きに意識を向けて読むのがコツです。
外郎売の全文【後半1】
早口ことば尽くし(ふりがな付き)



ここからは、地名や動物の名前を使った言葉遊びが続く場面です。
長押の長薙刀は、誰が長薙刀ぞ。向うの胡麻殻は荏の胡麻殻か真胡麻殻か、あれこそ本の真胡麻殻。がらぴいがらぴい風車。
おきゃがれ小法師、おきゃがれ小法師。昨夜もこぼして、又こぼした。たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりから、ちりから、つったっぽ。
たぽたぽ、干蛸落たら煮て食を。煮ても焼いても食われぬ物は、五徳、鉄弓、金熊童子に、石熊、石持、虎熊、虎鱚。中にも東寺の羅生門には、茨木童子が、うで栗五合、掴んでおむしゃる。
外郎売の全文【後半2】
結びの場面(ふりがな付き)



口上を締めくくる結びの場面です。ここまで読み切れば、外郎売の全文はコンプリートです。
かの頼光の膝元去らず。鮒、金柑、椎茸、定めて後段な、蕎麦切り、素麺、饂飩か、愚鈍な、こ新発知。小棚のこ下に、小桶にこ味噌がこ有るぞ、こ杓子こ持って、こ掬てこ寄せ。
おっと合点だ、心得たんぼの、川崎、神奈川、程ヶ谷、戸塚は走って行けば、灸を擦りむく、三里ばかりか、藤沢、平塚、大磯がしや、小磯の宿を七つ起きして、早天そうそう、相州小田原透頂香。隠れござらぬ、貴賤群衆の花のお江戸の花ういろう。あれ、あの花を見て、お心をお和らぎゃっという。
産子、這子に至るまで、此のういろうの御評判、御存知ないとは申されまいまいつぶり、角出せ、棒出せ、ぼうぼう眉に、臼、杵、擂鉢、ばちばち、ぐゎらぐゎらぐゎら(がらがらがら)と、羽目を外して今日御出の何も様に、上ねば成らぬ、売ねば成らぬと、息せい引っぱり、東方世界の薬の元締、薬師如来も上覧あれと、ホホ敬って、ういろうはいらっしゃりませぬか。
【後半】現代語訳
地名尽くし・結びの意味を解説



最後まで読んだけど、結局どういう話だったの?
薬の宣伝口上、という体裁で締めくくられているよ。
「長押の長薙刀」から「三里ばかりか」まで=地名と言葉遊びの掛詞
「長押の長薙刀は誰の長薙刀か」という言葉遊びに続き、川崎・神奈川・程ヶ谷(保土ケ谷)・戸塚・藤沢・平塚・大磯など、東海道の宿場町の名前が次々と登場します。
これは早口で歩みを進める様子を、実在の東海道の地名で表現している場面です。小田原に薬を売り歩く商人の設定と重なる、物語らしい場面でもあります。
「隠れござらぬ」から結びまで=口上を締めくくる決め台詞
「江戸中に知れ渡った花のういろう、この評判をご存知ないとは言わせない」と、最後は薬の評判を誇らしげに語ります。
台詞の終盤には、あらゆる薬の元締めとされる「薬師如来」への言及もあり、最後まで薬の宣伝という体裁を崩しません。そして「ういろうはいらっしゃりませぬか」という売り声で締めくくられます。
冒頭の自己紹介から始まり、薬の由来・効能、言葉遊び、そして最後の売り声まで、ひとつながりの「商人の口上」として構成されていることが分かります。
読み方の基本ルール
3つのコツ



息継ぎ(ブレス)の置き方。句点(。)ごとに大きく息を吸い直すのではなく、意味の切れ目で軽く息を継ぐ程度にとどめます。ブレスの回数が多すぎると、テンポが途切れて早口の勢いが失われてしまいます。
一語一語を区切って読む練習法。最初から全文を通しで読もうとせず、1つの場面(段落)ごとにゆっくり、一音一音はっきり発音する練習から始めます。慣れてきたら少しずつ速度を上げていきます。
リズムと抑揚を意識する。外郎売は同じ音の繰り返しが多いため、平坦に読むと単調になりがちです。強弱・高低をつけて読むことで、聞き手を飽きさせない口上らしい語り口になります。
3つのコツを一度に意識するのは大変なので、まずは通しで1回読んで全体像をつかみ、次につまずいた箇所だけを繰り返し練習し、最後に通しで速度を上げるという順番で進めると、無理なく身につきやすくなります。
スマホの録音アプリで自分の声を録音して聞き返すと、耳だけでは気づきにくい発音の甘さや息継ぎのタイミングのズレを、客観的に把握できます。慣れてきたら、鏡の前で口の動きも一緒に確認すると効果的です。
外郎売で鍛えられる
滑舌・発声のポイント



自分がどこでつまずいているのか、正直よく分からない…
録音して聞き直すと、つまずく場所が見えてくるよ。
母音の無声化に気をつける場面
「あかさたな、はまやらわ」のような五十音の羅列部分は、母音(あ・い・う・え・お)がはっきり発音できているかを確認する練習に向いています。
特に「し」「す」のように母音が無声化しやすい音は、意識して発音しないと聞き取りにくくなります。
鼻濁音の練習になる場面
「銭独楽」「野良如来」のように「が行」の音が連続する箇所は、鼻濁音(鼻に抜けるやわらかい「が」の音)の練習に適しています。
すべての「が行」を鼻濁音にする必要はありませんが、意識して使い分ける練習として活用できます。
早口部分のスピード調整
早口ことば尽くしの場面は、つい急いで読みたくなりますが、速さより正確さを優先したほうが結果的に上達が早くなります。
まずはゆっくり8割の速度で正確に読み、つまずかずに読めるようになってから少しずつ本来の速度に近づけていくと、無理なく滑舌が鍛えられます。
段落早見表
12区分でどこで何を練習できるか一覧



全文のどの場面が、どんな練習に向いているかを一覧にまとめました。
全文を12の場面に区切り、それぞれで鍛えられる音・つまずきやすい例・練習方法・上達の目安をまとめています。復習したい場面をすぐ探せるように活用してください。
| 該当箇所 | 難しい音 | つまずきやすい例 | 練習方法 | 合格の目安 |
|---|---|---|---|---|
| ①拙者親方と申すは〜 | ラ行・ダ行 | 「御存知」「参内」の読み飛ばし | 1文ごとに区切って音読 | つかえずに1文読める |
| ②元朝より大晦日まで〜 | 促音・長音 | 「透頂香」の音が詰まる | 単語だけを繰り返し発音 | 「とうちんこう」が3回連続で言える |
| ③さてこの薬、第一の奇妙には〜 | ラ行の連続 | 「舌の廻ることが」で舌がもつれる | ゆっくり10回、徐々に加速 | 普通の速度でもつれない |
| ④あわや咽、さたらな舌に〜 | 五十音全般 | 「あかさたな」で息切れ | 1音ずつ区切って発音 | ひと息で言い切れる |
| ⑤一っぺぎへぎに〜 | ハ行・パ行 | 「へぎほし、はじかみ」の混同 | 単語単位で反復 | 語順を間違えない |
| ⑥繻子、緋繻子〜 | シャ行 | 「繻子」の発音が不明瞭になる | 鏡を見ながら口の形を確認 | 「しゅす」が明瞭に言える |
| ⑦雨合羽か、番合羽か〜 | ガ行・カ行 | 「がっぱ」と「かっぱ」の混同 | ペアで比較しながら発音 | 聞き分けられる発音ができる |
| ⑧野良如来、野良如来〜 | ナ行・ラ行 | 「のらにょらい」が「のらにょうらい」になる | ゆっくり音を分解して練習 | 音の数を間違えない |
| ⑨京の生鱈、奈良生鰹〜 | ダ行・タ行の連続 | 早口になると語順が崩れる | 手拍子でリズムを取りながら練習 | 一定のテンポで言える |
| ⑩狸百疋、箸百膳〜 | ハ行・バ行・パ行 | 「百」の読み方が揺れる | 数字部分だけ抜き出して反復 | 「ひゃっぴき」等が安定する |
| ⑪長押の長薙刀〜 | ナ行・ガ行 | 「長薙刀」の繰り返しで混乱 | 短く区切って音読 | 意味の切れ目で息継ぎできる |
| ⑫おっと合点だ〜結び | 全体の抑揚 | 最後まで息切れせず読み切れない | 通し読みを録音して確認 | 全文を一定のテンポで読み切れる |
区分・練習方法は本サイトが独自に整理したものです(2026年9月時点)。
台詞に出てくる
難しい言葉の意味一覧



外郎売の台詞には、現代ではあまり使わない江戸時代の言葉が多く登場します。意味が気になる代表的な言葉をまとめました。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 透頂香(とうちんこう) | 「ういろう」に帝から賜ったとされる薬の正式名称 |
| 銭独楽(ぜにごま) | 江戸時代の子供の玩具。銭の形をしたコマ |
| 書写山の社僧正 | 兵庫県姫路市にある書写山圓教寺の高僧を指す言葉遊び |
| 繻子・緋繻子・繻珍 | いずれも絹織物の種類の名称。似た音を重ねる言葉遊び |
| 野良如来(のらにょらい) | 特定の仏を指す言葉ではなく、音の響きを楽しむための造語的な表現 |
| 武具馬具(ぶぐばぐ) | 武具と馬具をまとめた呼び方。数を重ねる言葉遊びに使われる |
| 長押(なげし) | 柱と柱の間に渡す横木のことで、和室の建築部材の名称 |
| 薬師如来 | 病を治す仏として信仰されてきた仏。台詞の結びで薬の由来として登場 |
| 羅生門 | 平安京にあったとされる正門(東寺の近く)。茨木童子の逸話とともに登場 |
| 新発知(しんぼち) | 「新発意(しんぼち)」の当て字で、仏門に入ったばかりの若い僧を指す言葉 |
意味の解釈は複数の文献・サイトを参照し、本サイトで要約しています。
1週間でできる
外郎売の練習スケジュール例



1日15分・録音3回を目安にした7日間のステップ例です。自分のペースに合わせて調整してください。
全文を通しで音読し、意味の分からない言葉をふりがな・現代語訳で確認します。速さは意識せず、正確に読むことを優先します。
段落早見表の①〜⑥(前半・中盤)を中心に、1日15分・3回録音して聞き直します。つまずいた場所を早見表でチェックします。
段落早見表の⑦〜⑫(後半)を重点的に練習します。ここでも1日15分・録音3回のペースを保ちます。
全文を通しで3回録音し、1日目の録音と聞き比べます。速さより、つまずきの回数が減っているかを基準に振り返ります。
外郎売と早口言葉・腹式呼吸
との違い



「滑舌を鍛えたいなら、普通の早口言葉でもいいのでは?」と思う方もいるはずです。ここでは外郎売と他の練習法との違いを整理します。
短い早口言葉との違い=五十音の網羅性
「生麦生米生卵」のような一般的な早口言葉は、特定の音の組み合わせだけを繰り返す短文です。
一方、外郎売は口上全体を通して五十音のほぼ全ての行が登場するように作られており、1本の台詞で発声の基礎を幅広くカバーできるのが最大の違いです。
短い早口言葉は特定の苦手な音をピンポイントで鍛えたいときに、外郎売は基礎を総合的に見直したいときに向いています。
腹式呼吸の練習との違い=発音とリズムの練習
腹式呼吸の練習は「声を長く・大きく安定させる」ための土台づくりが目的です。
対して外郎売は、その土台の上で発音・アクセント・テンポといった言葉そのものの技術を鍛える練習にあたります。
どちらか一方ではなく、腹式呼吸で声の土台を整えたうえで外郎売に取り組むと、練習の効果を実感しやすくなります。
お手本音声・テキストを
探すときの注意点



自分の声だけを頼りに練習すると、発音のクセに気づきにくくなります。ここでは実際に確認できたお手本音声・テキストの探し方を紹介します。
学校や養成所で配られる版との言い回しの違い
外郎売は口伝で受け継がれてきた台詞のため、テキストによって細部の言い回しが微妙に異なります(例:「銭独楽」を「銭ゴマ」と書く版もあります)。
養成所や専門学校で配布される版と、この記事の全文で表記が異なっていても、誤りではありません。
まずは1つの版に絞って練習し、慣れてから他の版と比較するのがおすすめです。
引用・練習利用時の著作権の考え方
外郎売の原文(江戸時代の台詞)自体は著作権の保護期間が過ぎていますが、現代の各サイトが作成した現代語訳・ふりがな表記・録音音声には、それぞれ別の著作権が発生します。
他サイトの現代語訳や音声をそのまま転載するのではなく、公式サイトへのリンク紹介にとどめるのが安全な使い方です。
お手本音声を探すなら、声優事務所「アトミックモンキー」監修の音声を公開している文化ネットが具体的です。
初心者向けの「ゆっくりver.」と「ふつうver.」の基礎編2種類に加え、少年(低音・高音)、少女2パターン、若手舞台役者3パターンなど、計7種類のキャラクター別に演じ分けた応用編の音声もまとめて聴けます。
すべての音声を順番に再生できる機能もあり、暗記や演じ分けの聴き比べにも活用できます。
音声と合わせて使うテキストは、縦書き・横書き・ふりがな付き・ふりがな無しなど、複数の形式で選べるサイトを使うと自分の学習スタイルに合わせやすくなります。
「聞く→まねる→録音→比較」の順で練習すると、自分の発音とお手本の違いに気づきやすくなります。
全文テキストは、新字新仮名遣い表記の全文と現代語訳の両方を掲載しているbenricho.org(みんなの知識 ちょっと便利帳)も参考になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 外郎売はどれくらいの時間で読める?
通しで読むと、およそ7分前後が目安です。慣れないうちはもっと時間がかかりますが、練習を重ねるうちに自然と短くなっていきます。
速さそのものより、つまずかずに読み切れるかを優先してください。
Q2. 覚えられないときはどうすればいい?
全文を一度に覚えようとせず、段落早見表の区分ごとに区切って覚えるのがおすすめです。
声に出して繰り返す「音読」の方が、目で追うだけの黙読より記憶に残りやすいといわれています。
1区分を覚えたら次に進み、最後に全区分を通して読み直す、という積み上げ方式にすると挫折しにくくなります。
Q3. アナウンサーも同じ台本を使う?
はい。外郎売は演劇・映画の研究所だけでなく、アナウンサーの養成でも広く使われてきました。
TBSテレビの新人アナウンサーが研修で小田原を訪れているように、局や会社によって取り入れ方は異なりますが、業界を横断して使われている教材です。
Q4. 意味が分からなくても練習効果はある?
あります。特に舌廻し部分は、音の並びそのものが五十音の発声練習になるよう作られているため、意味を深く理解していなくても滑舌のトレーニングとして機能します。
ただし、口上・効能部分の現代語訳を知っておくと、抑揚のつけ方に説得力が増します。
Q5. なぜ「外郎(ういろう)」という変わった題名なのか?
台詞の中で売られている薬の名前が「ういろう」だからです。歌舞伎の外題(演目名)ではなく、劇中に登場する商品名がそのまま通称として定着しました。
同じ読み方の和菓子「ういろう」とは別物である点は、このページの前半(「外郎(ういろう)」という薬の正体)でも触れた通りです。
外郎売の由来をもっと深く知る
享保3年の初演と歌舞伎十八番入り



享保3年、江戸・森田座での初演
外郎売が初めて演じられたのは、享保3年1月2日(1718年2月1日)、江戸の森田座(守田座)でした。
演目「若緑勢曾我」の中で、曽我十郎役の二代目市川團十郎と、曽我五郎役の役者による掛け合いの一部として演じられたのが始まりです。
当時はまだ独立した演目ではなく、様々な歌舞伎の演目に組み込まれる形で繰り返し上演されていました。台詞は評判となり、京都・大阪にも伝わったと記録されています。
衰退と単独上演としての復活
天保3年(1832年)に歌舞伎十八番へ選定されて以降、外郎売は「助六」の劇中で演じられるのが通例となり、台詞劇から長唄を交えた形へと変化していきます。
その後、大正11年(1922年)に初めて独立した演目として単独上演され、昭和55年(1980年)の十代目市川海老蔵による上演をきっかけに、現在のような台詞劇としての色合いが強い単独上演の形が定着しました。
令和4年(2022年)11月には、八代目市川新之助が初舞台の演目として外郎売を選んでおり、現在も歌舞伎の世界で世代を超えて受け継がれています。
小田原「外郎売の口上まつり」と地域での継承
外郎家の先祖が京都から小田原へ移り住んでから500周年にあたる平成16年(2004年)、地元・小田原で「外郎売の口上研究会」が発足し、同年から「外郎売の口上大会」が開催されるようになりました。
平成24年(2012年)の第9回大会には、十二代市川團十郎がゲストとして参加しています。
令和4年(2022年)以降は「外郎売の口上まつり」と名称を変え、小田原三の丸ホールで開催が続いています。
研究会の会員は台詞を活用した創作舞台を演じるなど、外郎売を小田原の伝統文化として発信する活動を続けています。
外郎売の練習を
声優の実力につなげる次のステップ



外郎売、けっこう読めるようになってきたかも!
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セリフ・台本での実践練習に進む
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日本ナレーション演技研究所(日ナレ)は全国10校舎(代々木・駒込・大宮・千葉・柏・横浜・仙台・名古屋・京都・難波)を展開する業界最大手です(2026年9月確認)。
応募資格は「中学卒業程度の学力」のみ・審査は実技と簡単な筆記のみ・費用は無料と、未経験者にとって間口が広いのが特徴です。
じっくり2年間かけて基礎から学びたい場合は、代々木アニメーション学院やアミューズメントメディア総合学院(AMG)、KADOKAWAアニメ・声優アカデミーのような専門学校という選択肢もあります。
「まず気軽に試したいなら養成所、腰を据えて2年間学ぶなら専門学校」という整理で考えると選びやすくなります。
外郎売の練習に手応えを感じたら、次は養成所の説明会を確認しましょう。
まとめ|外郎売の全文で
今日から発声練習を始めよう
外郎売は、享保3年に二代目市川團十郎が生み出した台詞劇で、五十音をまんべんなく練習できる構造から、俳優・アナウンサー・声優の発声練習の定番教材として使われ続けてきました。
全文を一度に覚えようとせず、段落早見表の区分ごとに区切って、1週間程度のペースで練習を進めるのがおすすめです。
意味を理解した上で声に出すことで、単なる早口言葉以上の練習効果が期待できます。
由来を知れば知るほど、300年以上前から変わらず読み継がれてきた台詞だと実感できるはずです。
享保3年の初演から令和の今も、俳優・アナウンサー・声優が同じ台詞に向き合い続けているのは、それだけこの練習の効果が確かなものだからといえるでしょう。
まずは今日、口上の書き出し「拙者親方と申すは」を声に出してみることから始めてみてください。










