【声優も使う定番】外郎売の全文・読み方・練習のコツを解説!

外郎売の台本を読みながらマイク前で発声練習する声優・アナウンサー
ミウ

外郎売って早口の呪文みたいなやつでしょ?

声優カナ

ちゃんと意味のある口上だよ。全文を見てみよう。

外郎売(ういろううり)は、江戸時代の歌舞伎役者・二代目市川團十郎が作った長台詞で、現在は声優・アナウンサー・俳優の発声練習の定番教材として使われています。

この記事では、全文(ふりがな付き)と現代語訳、由来、そして実際の練習のコツまでをまとめて紹介します。

目次

外郎売とは?
歌舞伎十八番の演目としての由来

歌舞伎舞台で外郎売の口上を演じる和装の役者

外郎売は、江戸時代の享保3年(1718年)に二代目市川團十郎が初めて演じた台詞劇です。

もとは独立した演目ではなく、歌舞伎の劇中に組み込まれた「早口言葉による雄弁術の披露」という趣向のひとつでした。

台詞は評判となり、江戸だけでなく京都・大阪にも伝わったと記録されています。

観客が先に台詞を言ってしまい、團十郎が逆から演じ返した逸話

寛保元年(1741年)、大阪の佐渡島長五郎座での上演では、團十郎が台詞を言い出す前に観客の方が先に「外郎売」を唱えてしまうという珍事が起きました。

團十郎はとっさに全ての台詞を逆から演じて観客を驚かせたと伝えられています。それだけ、当時から世間に浸透した台詞だったことがうかがえます。

なお「歌舞伎十八番」とは、市川團十郎家に代々伝わる当たり役18演目のことで、外郎売もそのひとつに数えられています(初演の詳しい経緯・選定の時期は後述の「由来をもっと深く知る」で解説します)。

「外郎(ういろう)」という薬の正体と
小田原とのつながり

小田原城を背景にした丸薬と和紙包み

外郎売の台詞は、「ういろう」という薬の効能を売り歩く商人の口上という体裁で書かれています。この「ういろう」、実はお菓子ではなく、中国から伝わった薬です。

外郎という中国渡来の薬の効能

台詞の中では、この薬を飲むと舌がよく回り、喉がすっきりして口の動きが良くなると説明されています。

制作の背景には、團十郎自身が喉の病で苦しんだ際にこの薬で回復し、感謝の意を込めて舞台で紹介したという逸話も伝わっています。

台詞の中で薬に「透頂香(とうちんこう)」という名前が登場します。

これは、冠の隙間から一粒取り出して用いたという逸話にちなみ、帝から賜った名という設定になっています。

「頂を透く香」と書いて「とうちんこう」と読む、という言葉遊びも仕込まれています。

なぜ小田原の名物として広まったのか

江戸時代の薬舗で丸薬を作る職人

「ういろう」は小田原の外郎家が製造・販売していた薬です。

外郎家の先祖は永正元年(1504年)に京都から小田原へ移り住んだと伝わっており、以来この地で薬を商ってきました。

制作の経緯には2つの説があります。ひとつは、小田原で行商されていた「ういろう」の口上を團十郎が見聞きし、大きく手を加えずに歌舞伎に取り入れたという説。

もうひとつは、外郎家は店頭販売のみで行商は行っておらず、台詞・衣装のすべてが團十郎自身の創作だったという説です。

いずれの説でも、実在する薬「ういろう」が題材になっている点は共通しています。

台詞の中の「相州小田原」という一節は、この実在する薬とその産地を指しています。

お菓子の「ういろう」とは別物である点を押さえておくと、台詞の意味がぐっと理解しやすくなります。

なぜ声優・アナウンサーの
発声練習の定番になっているのか

マイク前で台本を持ち発声練習する女性
ミウ

なんで外郎売がこんなに特別なの?

声優カナ

五十音を練習できる構造だからだよ。

五十音の子音・母音がひと通り登場する構造

映画監督・脚本家の田中栄三は、昭和12年(1937年)に出版した「トーキー俳優読本」で外郎売を台詞の教材として紹介し、日活多摩川撮影所の演技研究所でも研究生の教材に採用しました。

田中は、作者の二代目市川團十郎が言葉を科学的に研究し、難しい言い回しを通して五十音図の各行を練習できるように構成していると評価しています。

発音・アクセント・テンポ・間の取り方・イントネーションなど、発声の基本技術を幅広く鍛えられる点が、単なる早口言葉との違いです。

外郎売は演劇・映画の研究所や養成所、アナウンサーの養成でも広く使われてきました。

TBSテレビの新人アナウンサーは、研修の一環として毎年、外郎売ゆかりの地である小田原の「ういろう」本店を訪れているといわれています。

外郎売への評価
研究者・実践者たちの声

書物と研究資料を広げて外郎売を検討する二人

坪内逍遥・千田是也らによる評価

外郎売を評価しているのは現場の実践者だけではありません。演劇研究者の坪内逍遥は、外郎売の台詞を、上方の演目「傾城買」と並ぶ「古今の二大難台詞」と評しました。

国語学者の日下部重太郎も、頭韻・脚韻を踏み、紛らわしい類語を連ねる早口言葉の要素をすべて含む集大成と評価しています。

演出家・俳優の千田是也は日本の早口言葉・舌もじり言葉の集大成として調音練習の教材に取り上げ、教育学者の齋藤孝も、音とテンポの面白さから「思わず言いたくなる台詞」と述べています。

「俳優やアナウンサーなら一度は練習する」教材、というのは決して大げさな表現ではなく、実際に業界で長く使われてきた実績に基づく評価です。

外郎売の全文【前半1】
口上の書き出し(ふりがな付き)

和紙の巻物と毛筆と硯を置いた伝統的な書き物机

ここからは外郎売の全文を、場面ごとに分けて紹介します。今回の全文は、二代目市川團十郎の台本に基づく新字新仮名遣い表記を出典とし、読みやすさのために本サイトで場面ごとに区切っています。

まずは口上(自己紹介)の場面です。ふりがなを頼りに、声に出して読んでみてください。

拙者せっしゃ親方おやかたもうすは、おいのうち御存知ごぞんじのおかたもござりましょうが、お江戸えどって二十里上方にじゅうりかみがた相州そうしゅう小田原おだわら、一色町いっしきまちをおぎなされて、青物町あおものちょうのぼりへおでなさるれば、欄干橋らんかんばし虎屋とらや藤右衛門とうえもん只今ただいま剃髪ていはついたして、円斎えんさい名乗なのりまする。元朝がんちょうより大晦日おおつごもりまで、御手おてれまするくすりは、むかし、ちんのくに唐人とうじん外郎ういろうというひと、わがちょうたり、みかど参内さんだいおりから、くすりふかき、もちゆるとき一粒いちりゅうずつ、かぶり隙間すきまよりいだす。ってみかどより、透頂香とうちんこうたまわる。

すなわ文字もじには、いただきく、においきて、とうちんこうともうす。只今ただいまくすりことほか世上せじょうひろまり、方々ほうぼう似看板にせかんばんいだし、イヤ小田原おだわらの、灰俵はいだわらの、さんだわらの、炭俵すみだわらのと、色々いろいろもうせども、平仮名ひらがなもってういろうといたしたは、親方おやかた円斎えんさいばかり。もししやお立合たちあいうちに、熱海あたみとうさわ湯治とうじにおいでなさるるか、また伊勢御参宮いせごさんぐうおりからは、かなら門違かどちがいなされまするな。

外郎売の全文【前半2】
外郎の効能(ふりがな付き)

江戸の町を歩く外郎薬の行商人

続いて、外郎という薬の由来と効能を説明する場面です。

のぼりりならばみぎかた、おくだりなれば左側ひだりがわ八方はっぽう八棟やつむねおもてむね玉堂造ぎょくどうづくり破風はふにはきくきりとう御紋ごもん御赦免ごしゃめんあって、系図けいずただしきくすり御座ござる。イヤ最前さいぜんより家名かめい自慢じまんばかりもうしても、御存知ごぞんじないかたには、正身しょうじん胡椒こしょう丸呑まるのみ白川夜船しらかわよふね。さらば一粒いちりゅうたべべかけて、その気味合きみあいをおかけけましょう。

くすりを、かように一粒いちりゅうしたうえせまして、腹内ふくないおさめますると、イヤどうもいえぬは、いかん肺肝はいかんすこやかにって、薫風くんぷうのんどよりきたり、口中こうちゅう微涼びりょうしょうずるがごとし。うおとり麺類めんるいわせ、ほか万病まんびょう速効そっこうあることかみごとし。さてくすり

【前半】現代語訳
口上・外郎の効能をやさしく解説

古い台本とノートを並べ現代語訳を考える学習者
ミウ

古い言い回しが多くて、正直よく分からなかった…

声優カナ

大丈夫、要点だけ現代語でおさらいしよう。

「拙者親方と申すは」から「円斎と名乗りまする」まで

「私は親方と申しまして、旅の道中でご存知の方もいるでしょうが、江戸を出て小田原の一色町を通り過ぎ、青物町を登った先で店を構える、虎屋藤右衛門、今は出家して円斎と名乗っております」という自己紹介の場面です。

話者は「ういろう」を売る商人・円斎で、これから薬の由来と効能を語る、という導入部分にあたります。言葉遊びよりも、まず状況設定を示す落ち着いたパートです。

「元朝より大晦日まで」から「万病速効あること神の如し」まで

「一年中お売りしているこの薬は、昔、中国から来た外郎という人がわが国に持ち込み、帝に献上したものです。その名を『透頂香(とうちんこう)』と賜りました」という薬の由来の説明が続きます。

続けて、一粒飲むだけで喉がすっきりし、口の動きが良くなり、あらゆる病に速く効く、という薬の効能を誇張気味に売り込む場面です。ここまでが、外郎売の「導入部」にあたります。

外郎売の全文【中盤1】
舌廻し「第一の奇妙」(ふりがな付き)

マイク前で口の動きを確認する発声トレーニング

ここから、外郎売の中で最も有名な「舌廻し」の場面に入ります。「さて、この薬は」で始まり、薬の効き目を誇張する場面です。

意味が分かりにくい言葉が多く登場しますが、音を楽しむパートだと考えて読み進めてください。

第一だいいち奇妙きみょうには、したまわることが銭独楽ぜにごま裸足はだしげる。ひょっとしたまわすと、たてたまらぬじゃ。そりゃそりゃそりゃ、そりゃそりゃ、まわってたわ、まわってるわ。アワヤのど、サタラナしたに、カ歯音しおん。ハマのふたつはくちびる軽重きょうじゅう開口かいごうさわやかに、あかさたな、はまやらわ。

おこそとの、ほもよろを。っぺぎへぎに、へぎほし、はじかみ。ぼんまめ盆米ぼんごめぼん牛蒡ごぼう摘蓼つみたで摘豆つみまめ摘山椒つみざんしょう書写山しょしゃざん社僧正しゃそうじょう

小米こごめなまがみ小米こごめなまがみ、こん小米こごめのこなまがみ繻子しゅす緋繻子ひじゅす繻子しゅす繻珍しゅちんおや嘉兵衛かへえ嘉兵衛かへえおや嘉兵衛かへえ嘉兵衛かへえ嘉兵衛かへえおや嘉兵衛かへえ古栗ふるぐり古切口ふるきりくち雨合羽あまがっぱ番合羽ばんがっぱか。

外郎売の全文【中盤2】
五十音・語呂合わせ(ふりがな付き)

五十音の並びをイメージした木札と和紙の巻物

「あかさたな」の五十音や、語呂合わせの言葉遊びが連続する場面です。

貴様きさま脚絆きゃはんかわ脚絆ぎゃはんわれ脚絆きゃはんかわ脚絆ぎゃはん尻皮しっかわばかまのしっぽころびを、三針みはり針長はりながにちょとぬうて、ぬうてちょとぶんせ。河原撫子かわらなでしこ野石竹のぜきちく野良のら如来にょらい野良のら如来にょらい野良のら如来にょらい野良のら如来にょらい一寸いっすんのお小仏こぼとけ蹴躓けつまずきゃるな。

細溝ほそみぞ泥鰌どじょにょろり。きょうなまだら奈良ならなままながつお、ちょと五貫目ごかんめ。おちゃちょ、ちゃちょ、ちゃっとちょ、ちゃちょ。青竹あおだけちゃせんでおちゃちゃとちゃ。るわるわなにる、高野こうややまのおこけら小僧こぞうたぬき百疋ひゃぴき箸百膳はしひゃくぜん天目百杯てんもくひゃっぱい棒八百本ぼうはっぴゃっぽん

武具ぶぐ馬具ばぐ武具ぶぐ馬具ばぐ武具ぶぐ馬具ばぐわせて武具ぶぐ馬具ばぐ武具ぶぐ馬具ばぐきくくりきくくりきくくりわせてきくくりきくくりむぎごみ、むぎごみ、むぎごみ、わせてむぎごみむぎごみ。あの

【中盤】現代語訳
舌廻し部分は「意味」より「音」を追う理由

鏡で口の形を確認しながら発声練習する女性

「舌の廻ることが」から「はまやらわ」まで=五十音を鳴らす仕掛け

「この薬を飲むと、舌がよく回ることといったら、銭独楽(当時の玩具)が裸足で逃げ出すほどだ。舌が回りだすと矢も盾もたまらない」という、薬の効き目を誇張する場面です。

続く「あわや咽、さたらな舌に、か牙さ歯音」以降は、意味のある文章というより、「あかさたな、はまやらわ」の五十音を口の中で順番に鳴らすための音の配列です。ここは訳すというより、音の並びそのものを味わうパートだと考えてください。

「一っぺぎへぎに」から「菊栗」まで=語呂合わせの言葉遊び

「へぎ干し生姜」「盆豆・盆米・盆牛蒡」「摘み立て・摘み豆・摘み山椒」など、似た音の言葉を畳みかける言葉遊びが続きます。

「親も嘉兵衛、子も嘉兵衛」のような同音異義語・語呂合わせも、意味よりも音のリズムを楽しむために作られています。無理に一語一語を訳そうとせず、口の動きに意識を向けて読むのがコツです。

外郎売の全文【後半1】
早口ことば尽くし(ふりがな付き)

防音ブースで台本を早口で読み上げる男性

ここからは、地名や動物の名前を使った言葉遊びが続く場面です。

長押なげし長薙刀ながなぎなたは、長薙刀ながなぎなたぞ。むこうの胡麻殻ごまがら胡麻殻ごまがら胡麻殻ごまがらか、あれこそほん胡麻殻ごまがら。がらぴいがらぴい風車かざぐるま

おきゃがれ小法師こぼし、おきゃがれ小法師こぼし昨夜ゆんべもこぼして、またこぼした。たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりから、ちりから、つったっぽ。

たぽたぽ、干蛸ひだこおちたらを。てもいてもわれぬものは、五徳ごとく鉄弓てっきゅう金熊かなくま童子どうじに、いしくま石持いしもちとらくま虎鱚とらぎすなかにも東寺とうじ羅生門らしょうもんには、いばら童子どうじが、うでぐり五合ごんごうつかんでおむしゃる。

外郎売の全文【後半2】
結びの場面(ふりがな付き)

幕が閉じかけた和風の舞台

口上を締めくくる結びの場面です。ここまで読み切れば、外郎売の全文はコンプリートです。

かの頼光らいこう膝元ひざもとらず。ふな金柑きんかん椎茸しいたけさだめて後段ごだんな、蕎麦切そばきり、素麺そうめん饂飩うどんか、愚鈍ぐどんな、こ新発知しんぼち小棚こだなのこしたに、小桶こおけにこ味噌みそがこるぞ、こ杓子じゃくしって、こすくてこよこせ。

おっと合点がてんだ、心得こころえたんぼの、川崎かわさき神奈川かながわ程ヶ谷ほどがや戸塚とつかはしってけば、やいとすりりむく、三里さんりばかりか、藤沢ふじさわ平塚ひらつか大磯おおいそがしや、小磯こいそ宿しゅくななきして、早天そうてんそうそう、相州小田原そうしゅうおだわら透頂香とうちんこうかくれござらぬ、貴賤群衆きせんぐんじゅはなのお江戸えどはなういろう。あれ、あのはなて、おこころをおやわらぎゃっという。

産子うぶこ這子ほうこいたるまで、のういろうの御評判ごひょうばん御存知ごぞんじないとはもうされまいまいつぶり、つのせ、ぼうせ、ぼうぼうまゆに、うすきね擂鉢すりばち、ばちばち、ぐゎらぐゎらぐゎら(がらがらがら)と、羽目はめはずして今日こんにち御出おいでいずれさまに、あげねばらぬ、うらねばらぬと、いきせいひっっぱり、東方世界とうほうせかいくすり元締もとじめ薬師やくし如来にょらい上覧しょうらんあれと、ホホうやまって、ういろうはいらっしゃりませぬか。

【後半】現代語訳
地名尽くし・結びの意味を解説

地名の広がりをイメージした和風の古地図
ミウ

最後まで読んだけど、結局どういう話だったの?

声優カナ

薬の宣伝口上、という体裁で締めくくられているよ。

「長押の長薙刀」から「三里ばかりか」まで=地名と言葉遊びの掛詞

「長押の長薙刀は誰の長薙刀か」という言葉遊びに続き、川崎・神奈川・程ヶ谷(保土ケ谷)・戸塚・藤沢・平塚・大磯など、東海道の宿場町の名前が次々と登場します。

これは早口で歩みを進める様子を、実在の東海道の地名で表現している場面です。小田原に薬を売り歩く商人の設定と重なる、物語らしい場面でもあります。

「隠れござらぬ」から結びまで=口上を締めくくる決め台詞

「江戸中に知れ渡った花のういろう、この評判をご存知ないとは言わせない」と、最後は薬の評判を誇らしげに語ります。

台詞の終盤には、あらゆる薬の元締めとされる「薬師如来」への言及もあり、最後まで薬の宣伝という体裁を崩しません。そして「ういろうはいらっしゃりませぬか」という売り声で締めくくられます。

冒頭の自己紹介から始まり、薬の由来・効能、言葉遊び、そして最後の売り声まで、ひとつながりの「商人の口上」として構成されていることが分かります。

読み方の基本ルール
3つのコツ

台本にメモを書き込みながら練習する女性
1つ目

息継ぎ(ブレス)の置き方。句点(。)ごとに大きく息を吸い直すのではなく、意味の切れ目で軽く息を継ぐ程度にとどめます。ブレスの回数が多すぎると、テンポが途切れて早口の勢いが失われてしまいます。

2つ目

一語一語を区切って読む練習法。最初から全文を通しで読もうとせず、1つの場面(段落)ごとにゆっくり、一音一音はっきり発音する練習から始めます。慣れてきたら少しずつ速度を上げていきます。

3つ目

リズムと抑揚を意識する。外郎売は同じ音の繰り返しが多いため、平坦に読むと単調になりがちです。強弱・高低をつけて読むことで、聞き手を飽きさせない口上らしい語り口になります。

3つのコツを一度に意識するのは大変なので、まずは通しで1回読んで全体像をつかみ、次につまずいた箇所だけを繰り返し練習し、最後に通しで速度を上げるという順番で進めると、無理なく身につきやすくなります。

スマホの録音アプリで自分の声を録音して聞き返すと、耳だけでは気づきにくい発音の甘さや息継ぎのタイミングのズレを、客観的に把握できます。慣れてきたら、鏡の前で口の動きも一緒に確認すると効果的です。

外郎売で鍛えられる
滑舌・発声のポイント

鏡の前で呼吸と発声を確認する男性
ミウ

自分がどこでつまずいているのか、正直よく分からない…

声優カナ

録音して聞き直すと、つまずく場所が見えてくるよ。

母音の無声化に気をつける場面

「あかさたな、はまやらわ」のような五十音の羅列部分は、母音(あ・い・う・え・お)がはっきり発音できているかを確認する練習に向いています。

特に「し」「す」のように母音が無声化しやすい音は、意識して発音しないと聞き取りにくくなります。

鼻濁音の練習になる場面

「銭独楽」「野良如来」のように「が行」の音が連続する箇所は、鼻濁音(鼻に抜けるやわらかい「が」の音)の練習に適しています。

すべての「が行」を鼻濁音にする必要はありませんが、意識して使い分ける練習として活用できます。

早口部分のスピード調整

早口ことば尽くしの場面は、つい急いで読みたくなりますが、速さより正確さを優先したほうが結果的に上達が早くなります。

まずはゆっくり8割の速度で正確に読み、つまずかずに読めるようになってから少しずつ本来の速度に近づけていくと、無理なく滑舌が鍛えられます。

段落早見表
12区分でどこで何を練習できるか一覧

練習項目をノートで確認する声優志望者の手元

全文のどの場面が、どんな練習に向いているかを一覧にまとめました。

全文を12の場面に区切り、それぞれで鍛えられる音・つまずきやすい例・練習方法・上達の目安をまとめています。復習したい場面をすぐ探せるように活用してください。

該当箇所 難しい音 つまずきやすい例 練習方法 合格の目安
①拙者親方と申すは〜 ラ行・ダ行 「御存知」「参内」の読み飛ばし 1文ごとに区切って音読 つかえずに1文読める
②元朝より大晦日まで〜 促音・長音 「透頂香」の音が詰まる 単語だけを繰り返し発音 「とうちんこう」が3回連続で言える
③さてこの薬、第一の奇妙には〜 ラ行の連続 「舌の廻ることが」で舌がもつれる ゆっくり10回、徐々に加速 普通の速度でもつれない
④あわや咽、さたらな舌に〜 五十音全般 「あかさたな」で息切れ 1音ずつ区切って発音 ひと息で言い切れる
⑤一っぺぎへぎに〜 ハ行・パ行 「へぎほし、はじかみ」の混同 単語単位で反復 語順を間違えない
⑥繻子、緋繻子〜 シャ行 「繻子」の発音が不明瞭になる 鏡を見ながら口の形を確認 「しゅす」が明瞭に言える
⑦雨合羽か、番合羽か〜 ガ行・カ行 「がっぱ」と「かっぱ」の混同 ペアで比較しながら発音 聞き分けられる発音ができる
⑧野良如来、野良如来〜 ナ行・ラ行 「のらにょらい」が「のらにょうらい」になる ゆっくり音を分解して練習 音の数を間違えない
⑨京の生鱈、奈良生鰹〜 ダ行・タ行の連続 早口になると語順が崩れる 手拍子でリズムを取りながら練習 一定のテンポで言える
⑩狸百疋、箸百膳〜 ハ行・バ行・パ行 「百」の読み方が揺れる 数字部分だけ抜き出して反復 「ひゃっぴき」等が安定する
⑪長押の長薙刀〜 ナ行・ガ行 「長薙刀」の繰り返しで混乱 短く区切って音読 意味の切れ目で息継ぎできる
⑫おっと合点だ〜結び 全体の抑揚 最後まで息切れせず読み切れない 通し読みを録音して確認 全文を一定のテンポで読み切れる

区分・練習方法は本サイトが独自に整理したものです(2026年9月時点)。

台詞に出てくる
難しい言葉の意味一覧

国語辞典を引いて外郎売の難しい言葉を調べる学習者

外郎売の台詞には、現代ではあまり使わない江戸時代の言葉が多く登場します。意味が気になる代表的な言葉をまとめました。

言葉 意味
透頂香(とうちんこう) 「ういろう」に帝から賜ったとされる薬の正式名称
銭独楽(ぜにごま) 江戸時代の子供の玩具。銭の形をしたコマ
書写山の社僧正 兵庫県姫路市にある書写山圓教寺の高僧を指す言葉遊び
繻子・緋繻子・繻珍 いずれも絹織物の種類の名称。似た音を重ねる言葉遊び
野良如来(のらにょらい) 特定の仏を指す言葉ではなく、音の響きを楽しむための造語的な表現
武具馬具(ぶぐばぐ) 武具と馬具をまとめた呼び方。数を重ねる言葉遊びに使われる
長押(なげし) 柱と柱の間に渡す横木のことで、和室の建築部材の名称
薬師如来 病を治す仏として信仰されてきた仏。台詞の結びで薬の由来として登場
羅生門 平安京にあったとされる正門(東寺の近く)。茨木童子の逸話とともに登場
新発知(しんぼち) 「新発意(しんぼち)」の当て字で、仏門に入ったばかりの若い僧を指す言葉

意味の解釈は複数の文献・サイトを参照し、本サイトで要約しています。

1週間でできる
外郎売の練習スケジュール例

1週間の外郎売練習予定を手帳に整理する女性

1日15分・録音3回を目安にした7日間のステップ例です。自分のペースに合わせて調整してください。

1〜2日目

全文を通しで音読し、意味の分からない言葉をふりがな・現代語訳で確認します。速さは意識せず、正確に読むことを優先します。

3〜4日目

段落早見表の①〜⑥(前半・中盤)を中心に、1日15分・3回録音して聞き直します。つまずいた場所を早見表でチェックします。

5〜6日目

段落早見表の⑦〜⑫(後半)を重点的に練習します。ここでも1日15分・録音3回のペースを保ちます。

7日目

全文を通しで3回録音し、1日目の録音と聞き比べます。速さより、つまずきの回数が減っているかを基準に振り返ります。

外郎売と早口言葉・腹式呼吸
との違い

お腹に手を当てて腹式呼吸を練習する男性

「滑舌を鍛えたいなら、普通の早口言葉でもいいのでは?」と思う方もいるはずです。ここでは外郎売と他の練習法との違いを整理します。

短い早口言葉との違い=五十音の網羅性

「生麦生米生卵」のような一般的な早口言葉は、特定の音の組み合わせだけを繰り返す短文です。

一方、外郎売は口上全体を通して五十音のほぼ全ての行が登場するように作られており、1本の台詞で発声の基礎を幅広くカバーできるのが最大の違いです。

短い早口言葉は特定の苦手な音をピンポイントで鍛えたいときに、外郎売は基礎を総合的に見直したいときに向いています。

腹式呼吸の練習との違い=発音とリズムの練習

腹式呼吸の練習は「声を長く・大きく安定させる」ための土台づくりが目的です。

対して外郎売は、その土台の上で発音・アクセント・テンポといった言葉そのものの技術を鍛える練習にあたります。

どちらか一方ではなく、腹式呼吸で声の土台を整えたうえで外郎売に取り組むと、練習の効果を実感しやすくなります。

お手本音声・テキストを
探すときの注意点

イヤホンでお手本音声を聞きながら発声練習する女性

自分の声だけを頼りに練習すると、発音のクセに気づきにくくなります。ここでは実際に確認できたお手本音声・テキストの探し方を紹介します。

学校や養成所で配られる版との言い回しの違い

外郎売は口伝で受け継がれてきた台詞のため、テキストによって細部の言い回しが微妙に異なります(例:「銭独楽」を「銭ゴマ」と書く版もあります)。

養成所や専門学校で配布される版と、この記事の全文で表記が異なっていても、誤りではありません。

まずは1つの版に絞って練習し、慣れてから他の版と比較するのがおすすめです。

引用・練習利用時の著作権の考え方

外郎売の原文(江戸時代の台詞)自体は著作権の保護期間が過ぎていますが、現代の各サイトが作成した現代語訳・ふりがな表記・録音音声には、それぞれ別の著作権が発生します。

他サイトの現代語訳や音声をそのまま転載するのではなく、公式サイトへのリンク紹介にとどめるのが安全な使い方です。

お手本音声を探すなら、声優事務所「アトミックモンキー」監修の音声を公開している文化ネットが具体的です。

初心者向けの「ゆっくりver.」と「ふつうver.」の基礎編2種類に加え、少年(低音・高音)、少女2パターン、若手舞台役者3パターンなど、計7種類のキャラクター別に演じ分けた応用編の音声もまとめて聴けます。

すべての音声を順番に再生できる機能もあり、暗記や演じ分けの聴き比べにも活用できます。

音声と合わせて使うテキストは、縦書き・横書き・ふりがな付き・ふりがな無しなど、複数の形式で選べるサイトを使うと自分の学習スタイルに合わせやすくなります。

「聞く→まねる→録音→比較」の順で練習すると、自分の発音とお手本の違いに気づきやすくなります。

全文テキストは、新字新仮名遣い表記の全文と現代語訳の両方を掲載しているbenricho.org(みんなの知識 ちょっと便利帳)も参考になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 外郎売はどれくらいの時間で読める?

通しで読むと、およそ7分前後が目安です。慣れないうちはもっと時間がかかりますが、練習を重ねるうちに自然と短くなっていきます。

速さそのものより、つまずかずに読み切れるかを優先してください。

Q2. 覚えられないときはどうすればいい?

全文を一度に覚えようとせず、段落早見表の区分ごとに区切って覚えるのがおすすめです。

声に出して繰り返す「音読」の方が、目で追うだけの黙読より記憶に残りやすいといわれています。

1区分を覚えたら次に進み、最後に全区分を通して読み直す、という積み上げ方式にすると挫折しにくくなります。

Q3. アナウンサーも同じ台本を使う?

はい。外郎売は演劇・映画の研究所だけでなく、アナウンサーの養成でも広く使われてきました。

TBSテレビの新人アナウンサーが研修で小田原を訪れているように、局や会社によって取り入れ方は異なりますが、業界を横断して使われている教材です。

Q4. 意味が分からなくても練習効果はある?

あります。特に舌廻し部分は、音の並びそのものが五十音の発声練習になるよう作られているため、意味を深く理解していなくても滑舌のトレーニングとして機能します。

ただし、口上・効能部分の現代語訳を知っておくと、抑揚のつけ方に説得力が増します。

Q5. なぜ「外郎(ういろう)」という変わった題名なのか?

台詞の中で売られている薬の名前が「ういろう」だからです。歌舞伎の外題(演目名)ではなく、劇中に登場する商品名がそのまま通称として定着しました。

同じ読み方の和菓子「ういろう」とは別物である点は、このページの前半(「外郎(ういろう)」という薬の正体)でも触れた通りです。

外郎売の由来をもっと深く知る
享保3年の初演と歌舞伎十八番入り

江戸時代の歌舞伎芝居小屋へ向かう人々

享保3年、江戸・森田座での初演

外郎売が初めて演じられたのは、享保3年1月2日(1718年2月1日)、江戸の森田座(守田座)でした。

演目「若緑勢曾我」の中で、曽我十郎役の二代目市川團十郎と、曽我五郎役の役者による掛け合いの一部として演じられたのが始まりです。

当時はまだ独立した演目ではなく、様々な歌舞伎の演目に組み込まれる形で繰り返し上演されていました。台詞は評判となり、京都・大阪にも伝わったと記録されています。

衰退と単独上演としての復活

天保3年(1832年)に歌舞伎十八番へ選定されて以降、外郎売は「助六」の劇中で演じられるのが通例となり、台詞劇から長唄を交えた形へと変化していきます。

その後、大正11年(1922年)に初めて独立した演目として単独上演され、昭和55年(1980年)の十代目市川海老蔵による上演をきっかけに、現在のような台詞劇としての色合いが強い単独上演の形が定着しました。

令和4年(2022年)11月には、八代目市川新之助が初舞台の演目として外郎売を選んでおり、現在も歌舞伎の世界で世代を超えて受け継がれています。

小田原「外郎売の口上まつり」と地域での継承

外郎家の先祖が京都から小田原へ移り住んでから500周年にあたる平成16年(2004年)、地元・小田原で「外郎売の口上研究会」が発足し、同年から「外郎売の口上大会」が開催されるようになりました。

平成24年(2012年)の第9回大会には、十二代市川團十郎がゲストとして参加しています。

令和4年(2022年)以降は「外郎売の口上まつり」と名称を変え、小田原三の丸ホールで開催が続いています。

研究会の会員は台詞を活用した創作舞台を演じるなど、外郎売を小田原の伝統文化として発信する活動を続けています。

外郎売の練習を
声優の実力につなげる次のステップ

演技スタジオで表現練習に取り組む講師と受講生
ミウ

外郎売、けっこう読めるようになってきたかも!

声優カナ

いいね!次はセリフ表現の練習に進んでみよう。

セリフ・台本での実践練習に進む

外郎売で滑舌・発声の基礎が整ってきたら、次は感情のこもったセリフを声に出す練習にステップアップするのがおすすめです。

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じっくり2年間かけて基礎から学びたい場合は、代々木アニメーション学院やアミューズメントメディア総合学院(AMG)、KADOKAWAアニメ・声優アカデミーのような専門学校という選択肢もあります。

「まず気軽に試したいなら養成所、腰を据えて2年間学ぶなら専門学校」という整理で考えると選びやすくなります。

外郎売の練習に手応えを感じたら、次は養成所の説明会を確認しましょう。

まとめ|外郎売の全文で
今日から発声練習を始めよう

外郎売は、享保3年に二代目市川團十郎が生み出した台詞劇で、五十音をまんべんなく練習できる構造から、俳優・アナウンサー・声優の発声練習の定番教材として使われ続けてきました。

全文を一度に覚えようとせず、段落早見表の区分ごとに区切って、1週間程度のペースで練習を進めるのがおすすめです。

意味を理解した上で声に出すことで、単なる早口言葉以上の練習効果が期待できます。

由来を知れば知るほど、300年以上前から変わらず読み継がれてきた台詞だと実感できるはずです。

享保3年の初演から令和の今も、俳優・アナウンサー・声優が同じ台詞に向き合い続けているのは、それだけこの練習の効果が確かなものだからといえるでしょう。

まずは今日、口上の書き出し「拙者親方と申すは」を声に出してみることから始めてみてください。

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