弔辞の例文と書き方・読み方|孫代表を頼まれ頭が真っ白・声が震える人も3分で読める

斎場で、喪服の男性が祭壇の手前で白い紙を両手に持って弔辞を読み、参列者が座って静かに聞いている
この記事の監修
吉松欣史

元NHKエグゼクティブ
アナウンサー
吉松 欣史
経歴NHKで32年間。W杯・五輪の生放送実況
専門脳科学・心理学を使ったあがり症の克服

祖父母の葬儀で、孫代表として弔辞を頼まれた。大切な人のための役目だと分かっていても、親族や参列者の前で読むと思うと、頭が真っ白になったらどうしよう、涙で声が震えたらどうしよう、と落ち着かなくなる人は少なくありません。

弔辞は、段落の頭に故人の呼び名を置いて、話しかける形で書くと読みやすくなります。元NHKエグゼクティブアナウンサー・吉松欣史の監修で、3分の例文と書き方、当日の読み方まで紹介します。

📍 この記事でわかること(3分で読了)
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弔辞は、段落の頭に故人の呼び名を置いて話しかける形で書くと、泣いて止まっても読み直せる

夜、マンションの台所の食卓で、40代の女性が便箋を前にボールペンを持ち、段落の頭に短い言葉だけを縦に書き出している手元。便箋の文字はぼけて読めない

弔辞は、葬儀や告別式で故人に向けて読むお別れの言葉です。結婚式のスピーチと違うのは、話しかける相手が会場の人ではなく、故人1人だという点です。そのため、故人の名前を呼ぶ言葉から始まる例文が多くあります。

東京博善の記事は、弔辞の構成を「導入」「故人との関係・呼称」「エピソード・人柄」「感謝と教え」「別れの言葉・結語」の順に並べています。この記事では、5つの段落のすべてを、故人の呼び名から始める形をおすすめします。

※出典:東京博善「【弔辞の例文】葬儀で伝えるお別れの言葉をご紹介」(2026年6月10日・1級葬祭ディレクター監修)

呼び名で始まる5つの段落

  • 呼び名とお別れの言葉「〇〇さん」と呼びかけ、知らせを聞いた思い
  • 故人との関係を1文でいつ、どこで出会ったか
  • 思い出1つその人らしさが出る場面を1つだけ
  • 教わったことと感謝今の自分に残っていること
  • 呼び名と結びの言葉もう一度呼びかけて、別れを告げる

段落の頭がいつも同じ呼び名なので、原稿のどこを読んでいるかを見失いにくくなります。顔を上げて遺影を見るのも、呼び名を口にする時と決めておけます。書く時に迷うのは3つ目の思い出だけで、ほかの4つはほぼ決まった言い回しで組めます。

昼、古い木造の作業小屋で、70代の男性が使い込んだ大工道具を棚に並べ、その横で30代の孫の男性がかんなを手に取り、刃を光にかざして眺めている

泣いて止まったら、次の段落の呼び名から読み直す

弔辞の途中で涙がこみ上げ、声が出なくなることは誰にでもあります。知恵袋には、弔辞を読むことになった人が「読み手は泣いてはいけないんでしょうか?」と尋ねる相談がありました。ベストアンサーは、泣くのは当たり前だと答えています。

泣くこと気にせず故人と一対一で話す気持ちで読まれてもいいのではないでしょうか
※出典:Yahoo!知恵袋「お葬式の弔辞について教えてください。」のベストアンサー(2022年8月)
昼、斎場の駐車場に止めた車の運転席で、喪服の40代の女性が便箋を膝に置いたまま、フロントガラス越しに曇り空を静かに見上げている。便箋の文字は読めない

止まってしまった時は、無理に続きを読まず、ひと呼吸おいて次の段落の呼び名から読み直します。富士葬祭の記事も、緊張で声が詰まっても深呼吸してから再開すれば問題ありませんと書いています。戻る場所が決まっているだけで、読む前の不安は小さくなります。

※出典:富士葬祭「葬儀の弔辞とは?書き方から読み方、マナーまで詳しく紹介」(2025年8月12日)

冬の朝、人のいない斎場の会場を後ろから見た全景。並んだ椅子の列の向こうに、白い花に囲まれた祭壇が遠くぼんやり見える。遺影や文字は写らない

長さは3分・約900字を目安にする

弔辞の長さの目安は、記事によって少しずつ違います。葬儀社など7つの記事を比べると、時間は「2〜3分」から「3〜5分」まで、文字数は「800字」から「1,200字」までの幅がありました。多くの記事が3分ほどを目安にしています。

弔辞の長さの目安(各記事の上限の時間)

横浜祭典(2〜3分・1,000文字前後)

3分

小さなお葬式(3分程度・800〜1,000字)

3分

全葬連(3分程度・原稿用紙3〜4枚)

3分

富士葬祭(3分程度・800〜1,200字)

3分

葬儀の拓商(約3分・1,000〜1,200字)

3分

東京博善(3〜5分・800〜1,000字)

5分

この記事のおすすめ(約900字)

3分

斎奉閣は「850~1,100文字」、家族の集いジャーナルは「900~1200文字」と文字数だけを書いています。この記事は3分・約900字をおすすめします

※出典:横浜祭典・小さなお葬式・全葬連・富士葬祭・葬儀の拓商・東京博善・斎奉閣・家族の集いジャーナルの弔辞の記事

3分・約900字にしておくと、途中で止まって読み直しても、長くなりすぎません。声に出してゆっくり読むと、900字はちょうど3分ほどです。書き終えたら、一度声に出して時間を計り、長ければ思い出の段落を削るのが早い直し方です。

弔辞の例文:3分の基本形と、家族葬・お別れ会で読む短い例文

秋の昼、郊外の駅前のロータリーで、喪服の40代の男性がタクシーを降り、黒いかばんを手に斎場の方へ歩き出す後ろ姿。看板や車の文字は読めない

ここからは、1章の5つの段落の順に組んだ例文です。学生時代からの友人を見送る50代の人が読む場面で、声に出すと3分ほどになります。

3分の基本形①呼び名とお別れの言葉(学生時代からの友人。書き手が作った見本)

「〇〇さん。あなたの訃報を聞いたのは、先週の火曜日の夜でした。電話を切ったあとも、しばらくは何も手につかず、ただ座ったまま、あなたの笑った顔ばかりを思い出していました。先月、駅前の喫茶店で会った時、あなたは次の山の計画を楽しそうに話していました。今日こうして、あなたの前でお別れの言葉を申し上げることになるとは、まだ信じられない気持ちでいます。」

冬の朝、一戸建ての門の郵便受けから、セーター姿の50代の男性が年賀はがきの束を取り出し、一番上の1枚を手に取ってほほえんでいる。はがきの文字は読めない

②故人との関係を1文で

「〇〇さん。私たちが出会ったのは、大学1年の春、山岳部の部室でした。同じ年に入部した5人の中で、あなたはいつも一番後ろを歩いて、遅れた仲間に声をかけてくれる人でした。卒業してからも、30年以上、毎年の年賀状を欠かさずに送ってくれました。その年賀状には、いつも短い手書きの一言が添えてあり、私は毎年それを読むのを楽しみにしていました。」

初夏の朝、山小屋の前の石段に、20代前半の大学生の男女5人が登山の格好で腰を下ろし、水筒の水を分け合って笑っている。古い写真のような色合い。看板の文字は読めない

③思い出1つ

「〇〇さん。2年の夏、北アルプスで私が足をくじいた時のことを覚えていますか。あなたは自分の荷物を仲間に預け、私の荷物を背負って、山小屋まで3時間、黙って隣を歩いてくれました。着いてから私が礼を言うと、あなたは『一人で歩くより楽しかった』とだけ言って笑いました。夕食の時も、私の足のことは誰にも話さず、山の景色の話ばかりをしてくれました。あの日から私は、困っている人の隣を黙って歩ける人になりたいと思ってきました。」

昼、会社の小さな会議室で、40代の男性の課長が若手社員2人の話を、ペンを置いて最後までうなずきながら聞いている。資料や画面の文字は見えない

④教わったことと感謝

「〇〇さん。あなたから教わったのは、急がなくていいということでした。仕事で行き詰まった時、あなたはいつも『一番後ろを歩けば全員が見える』と言ってくれました。その言葉に、私は救われてきました。部下を持つようになってからは、私も同じ言葉を若い人たちに伝えています。あなたの言葉は、私を通して、会ったことのない人たちにも届いています。本当にありがとう。」

夕方、山の稜線の登山道を、大きなザックを背負った2人の登山者が並んで歩いていく遠景。夕日に照らされた尾根と雲海が広がっている。人物は小さく写る

⑤呼び名と結びの言葉

「〇〇さん。山の仲間はみんな、あなたのことを忘れません。来年の夏は、あなたが好きだった北アルプスに、仲間と一緒に登るつもりです。一番後ろを歩くのは、今度は私の番です。残されたご家族のことは、私たちも力になりたいと思っています。どうぞ安らかにお眠りください。〇〇さん、長い間ありがとう。さようなら。」

例文の3つ目の段落は、山で荷物を背負ってくれた場面1つだけを話しています。人柄を「優しい人でした」と言うより、その人がしたことを1つ話す方が、会場の人にも故人の姿が浮かびます。ここを自分の場面に替えれば、そのまま使えます。

秋の朝、山の麓の登山口の駐車場で、登山服の60代の男女4人が車の横で登山靴のひもを結び、出発の準備をしながら笑っている

2分の短い例文:家族葬・お別れ会で短めにと頼まれた時

家族葬やお別れの会では、遺族から短めにと頼まれることもあります。その時は2つ目の関係を1つ目の段落に入れ、4つの段落にまとめます。思い出の段落だけは削らずに残すと、短くても故人らしさが伝わる弔辞になります。

昼、小さな家族葬のホールの控室で、喪服の60代の女性が、40代の男性に白い湯のみのお茶を差し出し、男性が両手で受け取って軽く頭を下げている

2分の短い例文の骨組み(書き手が作った見本。①と②をまとめ、③④⑤を短くして約600字にする)

「〇〇さん。大学の山岳部で出会ってから35年、あなたはいつも一番後ろを歩いて、遅れた仲間に声をかけてくれる人でした。」

「〇〇さん。足をくじいた私の荷物を背負って、山小屋まで3時間隣を歩いてくれた夏のことを、私は今も覚えています。あなたのように、困っている人の隣を歩ける人でいたいと思います。どうぞ安らかにお眠りください。さようなら。」

夜、自宅の居間のテーブルいっぱいに古いスナップ写真が広げられ、50代の女性がその中の1枚だけを手に取って見つめている。写真の人物の顔ははっきり写らない

思い出を詰め込みすぎた時は、1つに絞る

思い出が多い人ほど、あれもこれも書きたくなります。知恵袋には、翌日に祖母の弔辞を読む孫が、文章を作るのが苦手で「思い出を詰め込んだだけの長文になってしまいました」と相談していました。気持ちが強いほど、そうなりやすいものです。

※出典:Yahoo!知恵袋「早急 孫からの弔辞」(2011年10月)

思い出をいくつも並べると、1つ1つの場面が短くなり、聞いている人の心に残りません。いちばん故人らしいと思う場面を1つ選び、残りは心の中で語りかけると決めると、3分の中で場面を丁寧に話せます。

雨の午後、喫茶店の窓際の席で、50代の女性が古い手帳を開いたまま、コーヒーカップを両手で包み、窓の外の雨をぼんやり見つめている。手帳の文字は読めない

孫が読む弔辞の例文:20代・30代・40代と、思い出がない時

夏の夕方、田舎の家の縁側で、70代の祖母と小学生の孫娘が並んで座り、切ったすいかを食べながら庭を眺めている。少し古い写真のような色合い

孫の弔辞は、祖父母への感謝を伝える手紙のようなものです。東京博善の孫の弔辞の記事は、目安をひとりあたり2分~3分程度とし、「導入・挨拶」「訃報を聞いたときの気持ち」「故人との思い出」「感謝とお別れの言葉」の4つで組むと書いています。

※出典:東京博善「【例文付き】孫が弔辞(挨拶)を行う場合の例文集」(2026年3月13日・1級葬祭ディレクター監修)

同じ記事は、呼び方を年代で分けています。小学生以下なら「おじいちゃん」などの親しみやすい呼び方でよく、大学生以上なら「祖父〇〇」「敬愛する祖父」という呼び方の例を挙げています。呼び名で段落を始める1章の型は、孫の弔辞にもそのまま使えます。

春の昼、新幹線の窓際の席で、喪服の上に黒いコートを着た30代の男性が、膝に手を置いたまま窓の外の田園をじっと見つめている

30代の孫から祖父への例文

30代の孫から祖父へ(書き手が作った見本。3つ目の段落を思い出1つにして約900字に広げる)

「祖父〇〇へ。おじいちゃん、知らせを聞いて新幹線に乗った時も、まだ会えると思っていました。」

「おじいちゃん。私が小学生の夏休み、毎朝一緒に畑へ行き、きゅうりのとり方を教えてくれました。曲がったきゅうりを見せると、『形は悪くても味は同じだ』と笑ってくれたことを覚えています。」

「おじいちゃん。仕事でうまくいかない時、私はあの言葉を思い出しています。本当にありがとう。どうぞ安らかにお眠りください。」

夏の早朝、朝もやのかかる家庭菜園の畑で、麦わら帽子の70代の祖父と小学生の孫の男の子がしゃがみ、つるになったきゅうりを一緒に見ている

40代の孫から祖母への例文(孫代表・社会人)

40代の孫代表は、自分の子どもや親族の代表として読むことも多くなります。自分の思い出1つに加えて、孫やひ孫たちの気持ちを1文添えると、代表らしい弔辞になります。仕事の話は短くして、祖母との場面を中心に置きましょう。

昼、斎場の親族控室の座敷で、喪服の40代の女性が、小学生と中学生の子ども3人に囲まれて、祖母の思い出を穏やかに話している。部屋には遺影・写真立て・祭壇は無く、窓の外に庭木が見える

40代の孫代表から祖母へ(書き手が作った見本)

「おばあちゃん。孫を代表して、お別れの言葉を申し上げます。」

「おばあちゃん。私が就職で家を出る朝、玄関で黙っておにぎりの包みを渡してくれました。電車の中で開けると、私の好きな梅干しが3つ入っていました。」

「おばあちゃん。孫とひ孫の12人は、みんなおばあちゃんの味を覚えています。長い間、本当にありがとう。」

早朝の住宅街の玄関先で、割烹着の70代の女性が、スーツ姿で大きなかばんを持った20代の男性に、布に包んだおにぎりを手渡している

20代・学生の孫は、背伸びしない言葉で

20代や学生の孫は、難しい言い回しより、ふだん呼んでいた呼び名と自分の言葉で書く方が伝わります。知恵袋で急に孫の弔辞を頼まれた人への回答も、結びの決まり文句を「じいちゃん。いままでありがとう。」に変える案を出していました。

※出典:Yahoo!知恵袋「祖父が亡くなり急遽、孫の弔辞を頼まれました。」のベストアンサー(2023年1月)

昼、大学の学生食堂の窓際の席で、20代前半の男性がトレーを脇に寄せ、ノートに短い言葉を書き出しながら考えている。ノートの文字は読めない

思い出がない・会う機会が少なかった時

離れて暮らしていた孫の中には、書ける思い出がないと悩む人もいます。知恵袋には、外孫で交流が少なく「祖父との思い出が全くと言っていいほど記憶にありません」という24歳の相談がありました。この人は最後に、思い出の多い内孫に役目を譲っています。

※出典:Yahoo!知恵袋「孫が読む弔辞に関しまして」(2013年2月16日)

引き受ける時は、東京博善の記事のとおり、事前に家族や親戚に話を聞いてエピソードを集めます。親から聞いた祖父の若い頃の話や、家に残る道具1つでも十分です。「私は直接は知りませんが、父から聞いた話があります」と前置きすれば、正直な弔辞になります。

昼、古い一軒家の居間で、60代の父親が古い白黒写真のアルバムを開いて指さし、20代の娘がその横に座ってのぞき込み、話に聞き入っている。写真の人物の顔ははっきり写らない

友人代表・会社・恩師・家族の弔辞の例文と、心に残る弔辞にする一文

夕方、会社の休憩室の窓際で、ワイシャツ姿の50代の男性2人が紙コップのコーヒーを手に、空いた一つの席の方を見ながら静かに話している。顔は小さく写る。掲示の文字は読めない

立場が変わっても、5つの段落の順は同じです。変わるのは関係の言い方と、選ぶ思い出の場面です。小さなお葬式の記事は友人・恩師・会社関係者、全葬連の記事は恩師・友人・同僚・部下・社員・同業者の例文を紹介しています。ここでは3つ目の段落を中心に紹介します。

※出典:小さなお葬式・全葬連の弔辞の例文

昼、駅前の小さなラーメン店のカウンター席で、作業着とスーツの50代の男性2人が並んでラーメンを食べながら笑い合っている。少し古い写真のような色合い。品書きの文字は読めない

友人代表の例文(病気で亡くなった友人)

病気で亡くなった友人の弔辞では、闘病の苦しさを詳しく話すより、元気だった頃の場面か、病室で交わした言葉を1つ選びます。死や病名をそのまま言う言葉は避け、「旅立ち」「お別れ」などに言い換えると、遺族も聞きやすくなります。

友人代表の例の3つ目の段落(書き手が作った見本)

「〇〇さん。入院中に見舞った日、あなたは私の顔を見るなり、『今度はあの店のラーメンを食べに行こう』と言いました。その約束は果たせませんでしたが、あなたの笑顔は、あの日のまま私の中に残っています。」

昼、病院の明るい談話室の窓際で、パジャマにカーディガンを羽織った50代の男性と、見舞いに来た同年代の男性が並んで座り、窓の外を見ながら笑い合っている

会社の上司・同僚・部下の例文

会社の人が読む弔辞は、会社を代表して読むことも多く、仕事の成果を並べがちです。成果よりも、職場で見た行動を1つ選ぶ方が、遺族には新しい故人の顔として届きます。名乗りでは、部署と一緒に働いた年数を1文で伝えます。

部下から上司への例の3つ目の段落(書き手が作った見本です)

「〇〇さん。私があなたの課に配属された日、あなたは誰よりも早く出社して、私の机に手書きの座席表を置いてくれていました。それから15年、私は新しい人が来るたびに、同じように座席表を書いています。」

朝、まだ誰もいない明るいオフィスで、50代の男性が新しく来る人の机の上に、ペン立てと白いノートをそっとそろえて置いている。パソコンの画面や掲示の文字は見えない

恩師の例文

恩師への弔辞は、教え子として受けた言葉か、授業や部活動の場面を選びます。卒業してからの年数と、その教えが今の仕事や暮らしにどう残っているかを添えると、同じ教え子として参列した人たちにも思いが重なります。

恩師の例の3つ目の段落(書き手が作った見本)

「〇〇先生。中学3年の冬、進路に迷っていた私を放課後の理科室に呼び、ビーカーを洗いながら1時間話を聞いてくださいました。卒業して30年、私は今、同じ中学で理科を教えています。」

冬の放課後、中学校の理科室の流しで、白衣の60代の男性教師がビーカーを洗いながら、制服の女子生徒の話を穏やかな顔で聞いている

家族・親族の例文(娘から父へ・兄弟・叔父)

家族や親族が弔辞を読む時は、参列者の知らない家での顔を1つ話します。娘から父へなら子どもの頃の場面、兄弟なら一緒に育った家の場面です。家族葬では遺族と読む人が重なるので、喪主の挨拶と中身が重ならないよう先に話しておきます。

娘から父への例の3つ目の段落(書き手が作った見本)

「お父さん。私が小学生の頃、毎週日曜の朝、お父さんは台所に立って、家族5人分のホットケーキを焼いてくれました。焦がした1枚は、いつもお父さんのお皿にありました。」

日曜の朝、明るい家庭の台所で、エプロン姿の40代の父親がフライパンでホットケーキを焼き、小学生の娘がつま先立ちでのぞき込んでいる。少し古い写真のような色合い

心に残る弔辞は、その人にしか言えない場面1つ

心に残る弔辞は、言葉が立派なものではなく、その人にしか言えない場面が1つ入っているものです。タモリさんが赤塚不二夫さんに読んだ弔辞のように、有名な弔辞が今も語られるのは、2人だけの関係が伝わるからです。名言のトーク・スピーチの名言の記事でも紹介しています。

弔辞の書き方:書き出し・締めの言葉・忌み言葉・句読点

夜、静かな書斎の机で、60代の男性が老眼鏡をかけ、万年筆で便箋に縦書きの下書きをしている手元と横顔。便箋の文字はぼけて読めない

書き出しと締めの言葉は、決まった言い回しがあります。呼び名で始めて呼び名で結ぶ形でも、「御霊前に謹んで」で始まる改まった形でも、どちらでも構いません。故人との関係や、葬儀の雰囲気に合わせて選びましょう。

呼び名で始める形 改まった形
書き出し 〇〇さん。あなたの訃報を聞いたのは… 大切な友人〇〇さんの御霊前に、謹んでお別れのご挨拶を申し上げます
孫の書き出し おじいちゃん。知らせを聞いた時… 祖母の旅立ちにあたり、謹んで哀悼の意を捧げます
締めの言葉 〇〇さん、長い間ありがとう。さようなら どうぞ安らかにお眠りください

※出典:葬儀の拓商・家族の集いジャーナルの書き出しと結びの例(改まった形)

避けたい忌み言葉と重ね言葉

弔辞では、不幸が重なることや続くことを思わせる言葉を避けます。小さなお葬式の記事は、重ね言葉(たびたび・ますます・くれぐれも)、繰り返す言葉(再び・また)、死・死亡・生きていたころのような直接の言葉を挙げています。

避けたい言葉 言い換えの例
たびたび・くれぐれも・ますます よく・どうか・いっそう
再び・また・続いて あらためて・さらに
死ぬ・死亡 ご逝去・旅立ち・お別れ
生きていた頃 お元気だった頃・ご生前
苦しむ・切る・離れる 使わずに、場面の言葉で言う

※出典:小さなお葬式・富士葬祭の忌み言葉の例

句読点は付けず、一文字分空ける

奉書紙や巻紙に清書する時は、句読点を付けないのが昔からの書き方です。葬儀の拓商の記事も、縦書きで「句読点を付けない」と書いています。この記事の例文は読みやすさのため句読点を入れていますが、清書の時は一文字分の空白に置き換えましょう。

※出典:葬儀の拓商「弔辞の書き方とは?使いやすい例文はある?」(2023年12月2日)

昼、寺の本堂の縁側で、袈裟を着た70代の僧侶と喪服の50代の男性が並んで正座し、僧侶の話に男性がうなずいている。境内の木々が見える

宗教で変わる結びの言葉

「ご冥福をお祈りします」「成仏」は仏教の言葉です。全葬連の記事は、神道なら「御霊(みたま)の安らかならんことを祈ります」、キリスト教なら「天国での安らかな眠りをお祈りいたします」という例を挙げています。宗派は前もって遺族に確かめておきます。

※出典:全葬連「弔辞とは:弔辞の書き方や文例、マナーを徹底解説」(2026年2月4日)

昼、住宅街の小さな教会の入口の前で、喪服の30代の女性が白い花束を胸に抱え、木の扉が開くのを静かに待っている。看板の文字は読めない

弔辞の紙・封筒・折り方:奉書紙・巻紙・便箋・A4で書く時

夜、会社の誰もいないフロアの机で、ワイシャツ姿の40代の男性が、印刷した白いA4の紙を両手でていねいに三つ折りにしている手元。紙の文字はぼけて読めない

正式な弔辞は、巻紙か奉書紙に薄墨で縦書きにします。小さなお葬式の記事は、薄墨には「亡くなった悲しみから涙で墨が薄くなってしまった」という意味がこめられていると説明しています。

※出典:小さなお葬式「例文を参考に弔辞の書き方をマスターしよう!」

ただ、筆に慣れていない人にとって、巻紙への清書は大きな負担です。富士葬祭の記事は、最近は便箋に万年筆や黒インクのペンで丁寧に書いた略式でも問題ないとしています。パソコンで作ってA4に印刷する時も、縦書きにして余白を広めに取ると読みやすくなります。

※出典:富士葬祭「葬儀の弔辞とは?書き方から読み方、マナーまで詳しく紹介」

昼、斎場の控室の机で、黒いスーツの葬儀社の女性スタッフが、白い紙の包みを喪服の60代の男性の前に置き、たたみ方を手で示している。紙の文字は読めない

折り方と包み方・表書き

家族の集いジャーナルの記事によると、奉書紙は左から半分に折り、三つに屏風折りにしてから縦に二つ折りにします。包む紙の表には「弔辞」と書き、表に文字がくるよう左右を三つ折りにして、上下を裏へ折って包みます。

※出典:家族の集いジャーナル「【例文付き】弔辞の書き方とマナー」(2025年1月21日)

便箋やA4に書いた時は、封筒に入れて持って行きます。同じ記事は、不幸が重なる意味を避けるため、内側に紙が重なった二重の封筒ではなく、必ず一重の封筒を使うよう書いています。表書きは「弔辞」とし、読み始める時に封筒から出します。

昼、郵便局の記帳台の前で、喪服の上にコートを着た50代の女性が、白い一重の封筒を光にかざして、中身が透けないかを確かめている。封筒や掲示の文字は読めない

弔辞の読み方とマナー:誰が読む・頼まれた時・当日の流れ

昼、斎場の受付の前の廊下で、黒いスーツの葬儀社の男性スタッフが、喪服の50代の女性に小声で式の順番を説明し、女性が小さくうなずいている

弔辞を読むのは、故人と特に親しかった人です。全葬連の記事は、友人・同僚・上司・部下・親族などから選ばれ、告別式の僧侶の読経やお焼香の後に読むことが多いとしています。頼まれるのは、遺族が故人と近かったと考えている証です。

※出典:全葬連「弔辞とは:弔辞の書き方や文例、マナーを徹底解説」

頼まれたら引き受ける。難しい時は早めに伝える

小さなお葬式の記事は、弔辞をお願いされたら引き受けるのがマナーだとしています。一方で全葬連の記事は、自信がない時は正直に断ることもでき、その時は早めに連絡し、別の適任者を紹介するなどの配慮をするよう書いています。

※出典:小さなお葬式・全葬連

夕方、自宅のリビングで、40代の男性が電話を耳に当て、もう片方の手でメモ帳に読む順番と時間を書き留めている。メモの文字は読めない

引き受けたら、遺族に入れてほしい話と避けてほしい話、宗教や宗派を確かめます。読む順番と時間も、葬儀社の担当者に聞いておくと安心です。服装は喪服が基本で、男性は黒いスーツに白いシャツと黒いネクタイ、女性は黒いワンピースやスーツを着ます。

当日の流れ

流れ(上から順に) 読む人がすること
名前を呼ばれる 静かに立ち、祭壇の前へ進む
一礼 僧侶、遺族、遺影の順に一礼する
包みを開く 包みは懐か台に置き、原稿を両手で持つ
読む 落ち着いた声で、早口にならないように読む
供える 読み終えたら包み直し、表を霊前に向けて供える
戻る 遺影・僧侶・遺族に一礼して席に戻る

※出典:富士葬祭「葬儀の弔辞とは?」の読み方とマナー

原稿を持つ高さは、胸か目の高さ

持つ高さは、記事によって書き方が分かれています。小さなお葬式の記事は、目線が下がらないよう胸の高さで持つこと、家族の集いジャーナルの記事は、目の高さで掲げて読むことを勧めています。どちらも、顔を下に向けすぎないためです。

※出典:小さなお葬式・家族の集いジャーナル

昼、斎場のロビーのソファで、喪服の30代の女性が白い封筒を膝に置き、背筋を伸ばして座り、目を閉じて静かに息を整えている

弔辞のお礼

弔辞を読んでもらった遺族は、葬儀の後に読んだ人へお礼を伝えます。改まった品物よりも、「父も喜んでいると思います」という一言を、会場を出る前に直接伝えるのがいちばん気持ちが届きます。遺族として述べる挨拶は、弔辞とは別のものです。

弔辞で泣きそう・頭が真っ白・声が震える人へ:前日と当日の3つの準備

夜、マンションのベランダで、部屋着にカーディガンを羽織った40代の男性が手すりにもたれ、白い便箋を一枚持ったまま夜空を見上げて深く息を吐いている

知恵袋には、祖母の弔辞を読んだ人の相談がありました。「それまでぼろぼろ泣いていたのに弔辞を読むときあまりに緊張し、棒読みになってしまいました…しかも頭の真っ白であまり記憶がないのですが」とあります。悲しさと緊張は、同時にやってきます。

※出典:Yahoo!知恵袋「大好きな祖母が亡くなり弔辞を読みました。」(2011年9月)

ベストアンサーは、棒読みでも内容が伝わる弔辞の方が、泣いて何を言っているか分からないものより心に残るという見方でした。上手に読もうとするより、最後まで言葉を届けるための準備をしておきましょう。

  • 声に出して時間を計る前の晩に1回、3分前後かを確かめる
  • 呼び名で顔を上げると決める段落の頭の呼び名で遺影を見る
  • 止まったら次の呼び名へ息を吐いて、次の段落から読み直す

全葬連の記事も、弔辞は必ず声に出して練習し、家族や友人に聞いてもらうのもよいと書いています。黙読ではすらすら読めても、声に出すと詰まる所が見つかります。詰まった言葉は、言いやすい言葉に書き換えておきましょう。

※出典:全葬連「弔辞とは」の弔辞の練習

朝、斎場へ向かう前の自宅の玄関で、喪服の50代の女性が靴をはき終えて立ち上がり、手に持った黒い数珠と白い封筒を確かめている

元NHKエグゼクティブアナウンサーが大切にしている「伝わる話し方」の考え方

吉松欣史は、NHKで32年間、プロ野球や高校野球、Jリーグの実況を担当し、FIFAワールドカップ2010やロンドンオリンピック2012の放送にも携わりました。2023年にNHKを退局し、今は話し方の研修を行っています。

※出典:吉松欣史 講師プロフィール(経歴・主な実績)

その吉松も、入社当初は人前に立つと声が震え、頭が真っ白になっていました。ルーキー時代の祇園祭の生中継では、一字一句丸暗記したコメントが、始まった瞬間に全部飛んでしまったといいます。

※出典:吉松欣史 講師プロフィール(私自身のあがり症体験)

昼、誰もいない古いラジオの録音ブースの窓越しに、木の机の上の1本のマイクと、閉じたままの白い紙の束が見える。窓から柔らかな光が差している

吉松が指導の柱の一つに置いているのが、意識の向け先を変えることです。参列者に「どう見られているか」を気にするほど、緊張は強くなります。弔辞で届けるのは、故人への感謝と、その人らしさが伝わる場面1つです。

元NHK
アナウンサー
ヨシ

「どう見られるか」への意識を「何を届けるか」へ転換。認知的再評価でプレッシャーを力に変える。

※出典:吉松欣史 講師プロフィール(指導の3つの柱)

弔辞でよくある誤解・注意点

夕方、斎場から帰る途中の川沿いの遊歩道で、喪服の60代の男性がベンチに腰かけ、ネクタイを少しゆるめて、夕日に照らされた川面を静かに眺めている

誤解①:読み手は泣いてはいけない

弔辞の読み手は泣いてはいけない、と考える人がいます。けれども1章で見たように、故人を思って涙が出るのは自然なことです。大切なのは泣かないことではなく、止まった後にどこから読み直すかを決めておくことです。

誤解②:上手に読まないといけない

アナウンサーのように上手に読まなければ、と思うほど、緊張は強くなります。知恵袋のベストアンサーにもあったように、聞く人の心に残るのは、上手さより内容が伝わることです。ゆっくり、はっきり、の2つだけを意識しましょう。

夜、実家の仏間の前の廊下で、喪服の40代の姉と弟が並んで座り、湯のみを手に昔の話をしながら小さく笑い合っている。顔は小さく写る

誤解③:長いほど想いが伝わる

思いが強いほど、長く書きたくなります。けれども、多くの記事が目安にしているのは3分ほどです。弔辞の後にも焼香や出棺が続き、遺族は式の時間を気にしています。思い出1つを丁寧に話す3分の方が、想いはまっすぐ届きます。

晴れた昼、霊園の小道を、普段着の50代の夫婦が花束と手桶を持って並んで歩いていく後ろ姿

💡 眠れない・体の不調が続く方へ
大切な人を亡くした悲しみや、人前で話すことへの不安で、眠れない日や、体が動かず仕事や外出がつらい日が2週間以上続く時は、心療内科や精神科、かかりつけの医師に相談してください。厚生労働省の働く人のための相談窓口「こころの耳」では、電話やSNSで相談できます。

弔辞だけでなく、朝礼や会議、冠婚葬祭の挨拶など、人前で話すたびに頭が真っ白になる方へ。入社当初は自分も声が震えていた吉松欣史が、32年の生放送でたどり着いた話し方の考え方をお伝えする無料のオンライン勉強会があります。

講師の吉松欣史は、NHKで32年間アナウンサーを務め、サッカーW杯とオリンピックの実況を担当した元NHKエグゼクティブアナウンサーです。勉強会は無料のオンライン形式で、60分・顔出し不要です。人前で話す時の緊張が悩みの中心の方に向けた内容です。

※出典:吉松欣史 講師プロフィール(経歴・主な実績)

※通院中・治療中の方は、この記事の方法より主治医の方針を優先してください。

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弔辞で、よくある質問

Q弔辞は何分・何文字がいいですか?
3分・約900字をおすすめします。葬儀社などの記事の目安は「2〜3分」から「3〜5分」、文字数は800字から1,200字ほどまで幅がありますが、多くは3分ほどです。家族葬などで短めにと頼まれた時のために、2分・約600字の形も用意しておくと安心です。
Q弔辞は原稿を見ながら読んでいいですか?
原稿を見ながら読むのが一般的です。サルでもわかる葬儀の新常識の記事も「弔辞は原稿を見ながら読んでOK!」と書いています。胸か目の高さで持ち、段落の頭の呼び名を読む時に顔を上げると、下を向きっぱなしになりません。
Q読み終えた弔辞は、その後どうしますか?
包み直して、表を霊前に向けて祭壇に供えます。富士葬祭の記事も、読み終えたら再び包み、表面を霊前に向けて供えると書いています。下書きではなく、清書した方を持って行きましょう。
Q弔辞を頼まれても断りたい時は、どうしますか?
全葬連の記事は、自信がない時は正直に断ることもでき、早めに連絡して別の適任者を紹介するなどの配慮をするよう書いています。断る時は、頼まれたその場か、その日のうちに遺族へ伝えましょう。

弔辞の前に頭が真っ白になったり、声が震えたりするのは、あなたが人前で話すのに向いていないからではありません。人前で話す時の緊張が中心の方は、吉松欣史の無料オンライン勉強会(60分・顔出し不要)で、緊張と付き合いながら話すための考え方を知ってください。

講師の吉松欣史は、NHKで32年間アナウンサーを務め、サッカーW杯とオリンピックの実況を担当した元NHKエグゼクティブアナウンサーです。勉強会は無料のオンライン形式で、60分・顔出し不要です。人前で話す時の緊張が悩みの中心の方に向けた内容です。

※出典:吉松欣史 講師プロフィール(経歴・主な実績)

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