アサーティブコミュニケーションの例文12選|ビジネスで本音を飲み込んできた人も上司に言える

明るい会議室で上司と同僚に穏やかに意見を伝える女性会社員
この記事の監修
吉松欣史

元NHKエグゼクティブ
アナウンサー
吉松 欣史
経歴NHKで32年間。W杯・五輪の生放送実況
専門脳科学・心理学を使ったあがり症の克服

上司に仕事を頼まれすぎているのに「大丈夫です」と答えてしまう。お客様の無理な要望にも言い返せず、話し合いの後はもやもやしたまま帰る。そうして本音を飲み込む日が続くと、仕事そのものが少しずつ重くなっていきます。

アサーティブコミュニケーションは、自分も相手も大切にしながら、言いにくいことを率直に伝える話し方です。言い方の型と例文を先に持っておけば、本番で言葉を探さずにすみます。吉松欣史の監修で、相手別の例文12を紹介します。

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アサーティブコミュニケーションとは:本音を飲み込む言い方・強すぎる言い方を直す

朝、自宅のダイニングテーブルで、出勤前の30代の女性会社員がコーヒーカップの横でノートを開き、ペンで何かを書き出している手元と肩の近景。窓から朝の光。顔ははっきり写らない。ノートの文字は読めない

自分も相手も大切にして、率直に言う話し方

アサーティブ(assertive)は、もともと「自分の考えをはっきり言う」という意味の英語です。仕事で使う時は、相手を責めず、自分を押し殺しもせず、言いたいことを正直に伝える話し方を指します。アサーションとも呼ばれます。

反対の言い方は2つあります。言いたいことを飲み込む受け身の言い方(ノンアサーティブ)と、相手を言い負かそうとする強すぎる言い方(アグレッシブ)です。3つのタイプとDESC法の練習はアサーショントレーニングの記事で紹介しています。

朝、オフィス街の横断歩道を渡る通勤の人たちの中で、ベージュのトレンチコートを着た30代の女性会社員が前を向いて歩いている後ろ姿の遠景。顔は写らない。看板や信号の文字は見えない

言いにくい場面を3つの言い方で比べる

同じ場面でも、言い方しだいで相手の受け取り方は大きく変わります。職場でよくある言いにくい場面を5つ選び、飲み込む言い方と強すぎる言い方、アサーティブな言い方を表に並べました。右の列が、この記事で目指す言い方です。

場面 飲み込む/強すぎる アサーティブ
仕事が多すぎる 「大丈夫です」/「無理です」 「今週は手一杯です。どれを先にしますか」
会議で反対したい 黙っている/「それは違います」 「別の案もあるので、1分だけいいですか」
部下のミス 黙って自分で直す/「何度言えば分かるの」 「3か所違っていました。次は一緒に見直そう」
無理な要望 その場で引き受ける/「できません」 「その日は難しいのですが、翌日ならできます」
頼まれごと 引き受けて残業する/「忙しいので」 「今日は無理ですが、明日の午後ならできます」
朝、通勤電車のドアの横に立ち、つり革を持たずに小さな手帳を開いて読んでいる30代の女性会社員の肩から下の近景。窓の外を街並みが流れる。顔は写らない。手帳と車内の文字は見えない

4つの柱を仕事の言葉に直す

アサーティブには、率直・誠実・対等・自己責任の4つの柱があるといわれます。言葉だけでは分かりにくいので、仕事の場面で何をすればよいかに直しました。話す前に、4つのどれかが欠けていないかを確かめてみてください。

  • 率直遠回しにせず、何をしてほしいかを1文で言う
  • 誠実本心と違う「大丈夫です」を返事にしない
  • 対等上司にもお客様にも、へりくだりすぎず責めもしない
  • 自己責任言った結果を引き受け、言わなかったことを人のせいにしない

事実・気持ち・お願いの順で話すと角が立たない

この記事の例文12は、どれも「事実、気持ち、お願い」の順で作っています。DESC法の4段階を、仕事ですぐ使えるように3つにしぼった形です。先に事実を言うと、相手は責められたと感じにくく、話を最後まで聞いてくれます。

例文はどれも書き手が作った見本で、上司・部下と同僚・お客様の順に4つずつ並べました。上司には判断に要る事実を渡し、部下や同僚には人ではなく起きたことを話すのが共通の考え方です。自分の職場の言葉づかいに合わせて直してください。

上司に使えるアサーティブコミュニケーションの例文4つ

午後、オフィスの上司の席の横で、30代の女性会社員がタブレットを両手で持って立ち、椅子に座っている50代の男性上司に落ち着いて相談している横からの近景。顔ははっきり写らない。タブレットとモニターの画面は見えない角度。文字は無い

①仕事を頼まれすぎて手が回らない時

「大丈夫です」と引き受け続けると、締め切りの直前に全部が遅れ、かえって信頼を失います。抱えている仕事を事実として伝え、どれを先にするかを上司に決めてもらいます。そうすると、断るのではなく相談になります。

例文① 上司へ・仕事が多すぎる時

「今週はA社の見積もりと、月次の資料で手一杯です。」

「このままだと、どちらかが金曜に間に合わないかもしれません。」

「新しい件をどの順番で進めればよいか、決めていただけますか。」

午前、オフィスの壁ぎわの書類棚の前で、30代の女性会社員が青いファイルを1冊引き出して中をめくっている手元と肩の近景。顔は写らない。ファイルと書類の文字は読めない

②期限が無理だと伝える時

期限に間に合わないと気づいたら、早く言うほど上司の打てる手が増えます。「間に合いません」だけで終わらせず、いつまでなら何ができるかを添えます。選べる案を2つ出すと、話は責める方向ではなく決める方向に進みます。

例文② 上司へ・期限が無理な時

「15日の締め切りの件で、ご相談があります。」

「集計に思ったより時間がかかり、15日には半分までしか出せそうにありません。」

「15日に途中まで出すか、18日に全部出すか、どちらがよろしいでしょうか。」

朝、オフィスビルのエレベーターホールで、30代の女性会社員が書類フォルダを胸に持ち、エレベーターを待つ50代の男性上司に軽く会釈して声をかけている遠景。顔ははっきり写らない。表示板や案内の文字は見えない

③上司と違う意見を言う時

上司の案に反対したい時、「違うと思います」から始めると、相手は自分が否定されたと受け取ります。先に上司の案のよい所を1つ認め、そのうえで心配な点と自分の案を出します。反対するのではなく、案を足す言い方です。

例文③ 上司へ・違う意見を言う時

「この進め方なら、来月には形にできそうですね。」

「ただ、お客様の確認を後に回すと、やり直しが出るのが心配です。」

「最初の1週間だけ、確認の時間を入れてもよろしいですか。」

夜、駅のホームのベンチに座り、膝の上にバッグを置いて、線路の向こうの街の明かりをぼんやり見ている30代の女性会社員の横からの遠景。顔ははっきり写らない。駅名や案内の文字は見えない

④言えずに、もやもやして帰った後

知恵袋には、派遣社員の方から「職場の上司に言いたいことが言えず、悩んでいます。」という相談がありました。とっさに言いたいことを言葉にするのが苦手で、話し合いの場では「もやもやして帰ってきます。」と書いています。

※出典:Yahoo!知恵袋「職場の上司に言いたいことが言えず、悩んでいます」2021年8月

朝、オフィスの小さな打ち合わせブースで、30代の女性会社員がノートを手に、先に座っている50代の男性上司に軽く頭を下げてから椅子に座ろうとしている遠景。顔ははっきり写らない。文字は無い

ベストアンサーは、話を整理してから、改めて時間をもらうことをすすめていました。その場で言えなくても、アサーティブに伝える機会は終わりません。次の日に、5分だけ時間をもらうところから始めれば十分です。

例文④ 上司へ・後から時間をもらう時

「昨日の打ち合わせの件で、5分だけお時間をいただけますか。」

「あの場でうまく言葉にできなかったのですが、一つ気になっていることがあります。」

「〇〇の進め方について、ご相談させてください。」

部下・同僚へのアサーティブな表現と例文4つ

午前、オフィスの窓際の打ち合わせスペースで、30代の女性会社員と20代の男性の後輩が丸いテーブルに並んで座り、印刷した資料を指さしながら確かめている近景。顔ははっきり写らない。資料の文字は読めない

⑤部下のミスを責めずに直してほしいと伝える時

「何度言えば分かるの」と言いたくなる時ほど、言い方に気をつけます。性格ではなく、資料のどこが違ったかを具体的に言います。最後に次からどうするかを一緒に決めると、部下は責められたのではなく、助けられたと感じます。

例文⑤ 部下へ・ミスを直してほしい時

「提出してくれた資料、数字が3か所違っていました。」

「お客様に出す前だったので、間に合ってよかったです。」

「次からは、出す前に5分だけ一緒に見直しましょう。」

午前、オフィスの自席で、20代の男性社員が印刷した表に赤ペンで印をつけながら一人で見直している手元の近景。顔は写らない。紙の文字と数字は読めない

⑥同僚に手伝いを頼む時

同僚に頼みごとをする時、遠慮して「もしお時間があれば」とぼかすと、相手は急ぎかどうかが分かりません。何を、いつまでに、どのくらい手伝ってほしいかを言い切ります。断ってもよいと添えると、相手も返事がしやすくなります。

例文⑥ 同僚へ・手伝いを頼む時

「明日の会議の資料で、表を1枚だけ手伝ってもらえませんか。」

「15時までに仕上げたいのですが、1人では間に合いそうにありません。」

「難しければ、遠慮なく断ってくださいね。」

昼、オフィスの複合機の横で、30代の女性会社員と40代の女性の同僚が書類の束を手に、笑顔で短く立ち話をしている胸から下の近景。顔ははっきり写らない。書類と機械の画面の文字は見えない

⑦頼まれごとを断る時

頼まれごとを断れずに引き受けると、自分の仕事が後回しになります。断る時はお礼を言ってから、今できない理由を1つだけ伝え、できる日を出します。場面ごとの断り方は上手な断り方7選にまとめています。

例文⑦ 同僚へ・頼まれごとを断る時

「声をかけてくれてありがとう。」

「今日は締め切りの仕事があって、手が離せないんだ。」

「明日の午前なら30分空けられるけど、それでも間に合いそう?」

午後、会議の始まる前の誰もいない会議室で、30代の女性会社員が長机の各席に資料を1部ずつ配って置いている手元と肩の近景。椅子は空いている。資料の文字は読めない。顔は写らない

⑧会議で反対の意見を出す時

会議で反対の意見を出す時は、いきなり結論をぶつけず、発言してよいかを先に聞きます。「1点だけよろしいですか」の一言があるだけで、聞く側の構えがやわらぎます。そのうえで、心配な点と代わりの案を1つずつ言います。

例文⑧ 会議で・反対の意見を出す時

「1点だけ、よろしいですか。」

「この日程だと、検品の時間が半日しか取れないのが気になっています。」

「発送を1日遅らせる案も、検討していただけないでしょうか。」

お客様とのコミュニケーションで使えるアサーティブな例文4つ

昼、明るいショールームのカウンターで、30代の女性スタッフが40代の男性のお客様に、白いパンフレットを開いて見せながら穏やかに説明している横からの近景。顔ははっきり写らない。パンフレットの文字は読めない

⑨できない要望を角を立てずに断る時

できない要望には、まず要望そのものを受け止めてから、できない理由を短く伝えます。「できません」で終わると、お客様は突き放されたと感じます。最後に、代わりにできることを必ず1つ添えるのが、角を立てないこつです。

例文⑨ お客様へ・できない要望を断る時

「土曜日の配送をご希望なのですね。」

「申し訳ありません、土曜日は配送をお休みしております。」

「金曜日の夕方か、月曜日の午前でしたらお届けできますが、いかがでしょうか。」

夕方、小さな雑貨店のレジカウンターで、エプロンをつけた30代の女性店員が、品物を紙袋に丁寧に入れている手元の近景。顔は写らない。値札や袋の文字は無い

⑩値引きや納期の無理を言われた時

値引きや納期の無理を言われると、断ったら契約がなくなるのではと不安になります。条件をそのままのむのではなく、何を変えれば応えられるかを伝えます。お客様と一緒に条件を選ぶ形にすると、交渉が対立ではなく相談になります。

例文⑩ お客様へ・値引きや納期の相談

「ご予算に合わせたいお気持ちは、よく分かります。」

「この価格のままですと、ご希望の納期にはお応えできません。」

「納期を1週間いただければ、その分お値引きできますが、いかがでしょうか。」

午後、物流倉庫の出荷台の前で、作業着の30代の男性スタッフが、スーツ姿の取引先の50代の男性と、段ボール箱を前にクリップボードを見ながら話している遠景。顔ははっきり写らない。箱と紙の文字は見えない

⑪怒っているお客様への最初の一言

怒っているお客様の前では、すぐに説明や言い訳をしたくなります。けれども最初に要るのは、相手の気持ちを受け止める一言で、事実の確認はその後にします。クレーム対応の全体の流れはクレーム対応の基本5ステップで紹介しています。

例文⑪ お客様へ・怒っている時の最初の一言

「ご不便をおかけしてしまい、申し訳ございません。」

「お届けが遅れて、お困りになったのですね。」

「状況を確かめたいので、ご注文の日を教えていただけますか。」

午後、ホテルのロビーで、制服の40代の男性スタッフが、スーツケースを持った50代の女性のお客様に軽くお辞儀をして話を聞いている遠景。顔ははっきり写らない。案内の文字は見えない

⑫お客様に確認の時間をもらう時

すぐに答えられない時に、あいまいなまま「たぶん大丈夫です」と答えるのは、アサーティブとはいえません。分からないことは分からないと伝え、いつまでに答えるかを約束します。待つ時間が分かるだけで、お客様の不安は小さくなります。

午後、明るい製品の検査室で、白衣を着た40代の男性技術者に、30代の女性会社員がメモ帳を手に立ったまま確認している近景。机の上に小さな部品と計測器。顔ははっきり写らない。メモや機器の文字は読めない

例文⑫ お客様へ・確認に時間がかかる時

「その点は、担当の部署に確かめる必要があります。」

「本日の17時までに、お電話でお返事いたします。」

「お急ぎでしたら、分かった所から先にお伝えしましょうか。」

ビジネスコミュニケーションのスキルとアサーティブの関係:伝える・聞く・質問する

午前、在宅勤務の明るい部屋で、40代の男性会社員がヘッドセットをつけ、ノートパソコンに向かって手ぶりをまじえて穏やかに話している横からの近景。ノートパソコンの画面は見えない角度。顔ははっきり写らない。文字は無い

ビジネスコミュニケーションのスキルは、伝える力・聞く力・質問する力の3つに分けて説明されることが多くあります。アサーティブは、このうち伝える力の中でも、言いにくいことを言う場面で使うスキルです。

アサーティブは「言いにくいことを伝える」スキル

報告や説明が上手な人でも、相手の希望と違うことを言う場面になると、急に言葉が出なくなることがあります。ふだんの伝える力とは別に、反対・お願い・断りを言う時の型を持っておくのが、アサーティブというスキルです。

午前、建設現場の仮設事務所の前で、ヘルメットを手に持った40代の男性の現場監督が、作業着の30代の女性社員に図面を広げて見せながら話している遠景。顔ははっきり写らない。図面の文字は読めない

聞く力と組み合わせると、相手も本音を話しやすくなる

アサーティブに伝えた後は、相手の返事をさえぎらずに最後まで聞きます。自分の本音を言ったら、次は相手の本音を聞く番です。聞き方のこつは傾聴力トレーニング5つで紹介しています。言い合える職場は、こうして作られます。

昼、社員食堂の窓際の席で、30代の女性会社員と40代の男性の同僚が向かい合ってトレーを前に座り、女性がうなずきながら相手の話を聞いている近景。顔ははっきり写らない。文字は無い

職場のコミュニケーションは、質問で終えると続く

例文の多くが「いかがでしょうか」「決めていただけますか」と質問で終わっているのは、相手に選ぶ番を渡すためです。言いっぱなしにせず質問で終えると、話し合いが続きます。コミュニケーション能力を鍛える順番はこちらの記事にまとめました。

アサーティブコミュニケーションが職場で難しい・できない3つの原因

夕方、オフィスの廊下で、会議室から出てきた30代の女性会社員がノートを胸に抱え、窓の外の夕焼けを見て少し立ち止まっている後ろ姿の遠景。顔は写らない。文字は無い

アサーティブの考え方は分かっても、いざ職場で使おうとすると難しいと感じる人は多くいます。できないのは、気持ちが弱いからではありません。多くの場合、次の3つのどれかが、言葉が出るのを止めています。

否定される・嫌われるのが怖くて本音を飲み込む

言い返されたらどうしよう、嫌われたらどうしようと考えると、黙っているほうが安全に思えます。けれども、飲み込んだ本音は消えずにたまっていきます。意見が言えない原因と直し方は自分の意見が言えない原因と直し方5つで紹介しています。

昼、会社の非常階段の踊り場で、ワイシャツ姿の30代の男性会社員が手すりに軽く手を置き、窓の外の空を見て立っている後ろ姿の近景。顔は写らない。文字は無い

その場で言葉にする時間が足りない

会議や立ち話では、考えがまとまる前に話が次へ進んでしまいます。とっさに言葉にするのが苦手な人は、その場で言おうとしなくてかまいません。2章の例文④のように、時間をもらってから伝えるのも立派なアサーティブです。

夜、カフェのカウンター席で、30代の女性会社員が白いメモ用紙にボールペンで短く書き込んでいる手元の近景。横に紅茶のカップ。窓の外に街の明かり。顔は写らない。メモの文字は読めない

言いにくいことを言う時に声が震える・頭が真っ白になる

相手が上司や大切なお客様だと、話し始めた途端に声が震えたり、頭が真っ白になったりすることがあります。これは言い方の問題ではなく、人前で話す時の緊張です。緊張がある前提で、言う中身を紙に書いておくと言葉が出やすくなります。

監修の吉松欣史も、ルーキー時代は本番で用意した言葉が全部飛び、アナウンサーに向いていないと悩んだといいます。言えない悩みは、話すことを仕事にしてきた人にもある、ありふれた悩みです。

元NHK
アナウンサー
ヨシ

「自分はアナウンサーに向いていないんじゃないか」。本気で、辞めようと思った夜があります。

※出典:吉松欣史 講師プロフィール(私自身のあがり症体験)

アサーティブに伝える時にやってはいけないこと:
謝りすぎ・ため込み・長い前置き

雨の日の朝、駅の改札を出た所で、30代の女性会社員が透明なビニール傘をたたんでいる後ろ姿の遠景。行き交う人はぼやけている。顔は写らない。看板や案内の文字は見えない

アサーティブに伝えようとして、かえって伝わらなくなる言い方があります。どれも相手に気をつかった結果なので、自分では気づきにくいのが落とし穴です。よくある3つの言い方と、代わりにする言い方を表にまとめました。

やめること 代わりにすること
謝りを重ねる 謝るのは最初の1回だけ
ためて一気に言う 気になった日のうちに1つだけ言う
前置きが長い お願いを最初の2文以内に入れる

「すみません」を何度も重ねて、本題が伝わらない

「すみません、お忙しいところすみません」と謝りを重ねると、聞く側は何を頼まれるのか分からず身構えます。謝るのは最初の1回で十分です。謝りが多いほど、自分のお願いが小さく軽く見えてしまうことも覚えておいてください。

我慢をためて、ある日一気に強く言う

小さな不満を飲み込み続けると、ある日こらえきれずに強い言葉で言ってしまいます。受け身の言い方を続けた先に、攻撃的な言い方が待っているのです。気になったことは、小さいうちに1つずつ伝えるほうが相手も受け止めやすくなります。

午後、オフィスの給湯室で、30代の女性会社員が電気ポットからマグカップにお湯を注ぎながら、ひと息ついている肩から下の近景。顔は写らない。文字は無い

前置きが長く、お願いを最後まで言わない

相手に悪いと思うほど、事情の説明が長くなり、肝心のお願いが最後になります。聞く側は途中で、話の行き先が分からなくなります。何をしてほしいかは最初の2文以内に入れ、事情はその後に短く足すくらいがちょうどよい長さです。

アサーティブコミュニケーションのよくある誤解・注意点

夕方、川沿いの遊歩道を、30代の女性会社員と40代の男性の同僚が並んでゆっくり歩いている後ろ姿の遠景。川面に夕日が映っている。顔は写らない。文字は無い

誤解①:アサーティブとは、はっきり強く言うこと

アサーティブを「はっきり言うこと」と覚えると、強い言い方をしなければと思い込んでしまいます。けれどもアサーティブは、相手を大切にすることも同じくらい重んじます。声を大きくするより、言う中身をはっきりさせるほうが大切です。

午後、明るい図書館の窓際の閲覧席で、40代の女性会社員がひじをついて本を読んでいる横からの近景。本の表紙と背表紙の文字は見えない。顔ははっきり写らない

誤解②:本音を言ったら「強すぎた」と思われる

言いにくいことを言った後、強く言いすぎたかもと気になる人は多いはずです。コロンビア大学のエイムズらが交渉の授業を受けるMBAの学生172人を調べた研究では、相手からちょうどよい強さだと見られていた人の43%が、自分は強く言いすぎたと思っていました。

※出典:Ames & Wazlawek(2014)Pushing in the Dark, Personality and Social Psychology Bulletin(研究3)

この思い込みがある人は、関係を直そうとして、次の話し合いで自分に不利な条件をのむことがあったと報告されています。言った後に不安になっても、相手はそう受け取っていないことが多いと知っておけば、本音を引っ込めずにすみます。

午後、研修室の小さな机で、30代から40代の会社員2人が向かい合って座り、片方が台本の紙を手に話す練習をし、もう片方が穏やかに聞いている近景。顔ははっきり写らない。紙とホワイトボードの文字は見えない

誤解③:研修を受ければ、誰でもすぐに言えるようになる

アサーティブの研修で型を覚えても、本番で相手の前で言えるかは別の話です。頭で分かっていても、緊張すると言葉が出なくなるからです。型を覚えたら、言いやすい相手と小さな場面から試し、言えた経験を少しずつ増やしていきます。

監修の吉松欣史も、入社当初は人前に立つと声が震え、頭が真っ白になっていたといいます。そこから32年間、全国の放送局で生放送に立ち続け、何百人もの一流アスリートに、プレッシャーとどう向き合っているかをたずねてきました。

元NHK
アナウンサー
ヨシ

何万人が見ている本番に立ち続け、何百人もの一流アスリートに「プレッシャーとどう向き合っているか」を直接たずねてきた中で、私は本番で緊張に飲まれない話し方にたどり着きました。

※出典:吉松欣史 講師プロフィール(私自身のあがり症体験)

朝、オフィスビルの中庭の木陰のベンチで、スーツの上着を脇に置いた40代の男性会社員が、背すじを伸ばして目を閉じ、ゆっくり息を吐いている横からの遠景。顔ははっきり写らない。文字は無い

💡 人と話すこと自体がつらい方へ
職場で人と話すのが怖くて出勤がつらい、眠れない日や食欲のない日が2週間以上続く時は、話し方より先に、心療内科や精神科、職場の産業医に相談してください。厚生労働省の働く人のための相談窓口「こころの耳」では、電話やSNSで相談できます。

言う中身は決まっているのに、上司やお客様の前に立つと声が震えて言葉が出ない方へ。入社当初は自分も声が震えていた吉松欣史が、32年の生放送でたどり着いた話し方の考え方を伝える、無料のオンライン勉強会があります。

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※出典:吉松欣史 講師プロフィール(経歴・主な実績)

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アサーティブコミュニケーションでよくある質問と答え

Qアサーションとアサーティブの違いは?
考え方はほぼ同じです。アサーションは自分も相手も大切にする自己表現のこと、アサーティブはその態度を表す言葉です。練習の方法はアサーショントレーニングの記事で紹介しています。
QDESC法とは何ですか?
描写・表現・提案・選択の4段階で伝える方法です。この記事の「事実・気持ち・お願い」は、それを3つにしぼった形です。4段階の練習はアサーショントレーニングの記事にあります。
Qノンアサーティブな自分を直すには?
小さな本音を1日1つ、言いやすい相手に言うことから始めます。言えない原因が分かると直しやすくなるので、自分の意見が言えない原因と直し方も読んでみてください。
Q相手が強い言い方をする上司の時は?
同じ強さで言い返さず、事実とお願いだけを短く伝えます。いつも機嫌が悪い人への接し方は機嫌が悪い人への対処法で紹介しています。
Qメールやチャットでも使えますか?
使えます。事実・気持ち・お願いを3行に分けて書き、お願いの行を質問で終えます。文字だけだと強く見えやすいので、最初にお礼の一言を入れておくと安心です。
Q会社でアサーティブの研修を受けたい時は?
社内でまとめて学ぶ場合は、研修を行う会社に相談します。吉松欣史も法人向けに話し方・コミュニケーションの研修を行っています。内容は法人向け研修をご覧ください。

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※出典:吉松欣史 講師プロフィール(経歴・主な実績)

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