今日から変われる!人に好かれる話し方を手に入れる7つのコツ

こんにちは、下原マヤです。私はコールセンターで15年間人材育成に携わってきました。

あなたは自分の話し方や自分の声を客観的に聴いてみたことはありますか?「聴いたことがない」という人は今すぐスマホのレコーダー機能を利用して、自分の話し方や声を聴いてみてください。

「自分で思っていた声と全然違う!」「こんなに早口で話してたの?」「何て言ってるのかが聴き取りにくい」などきっと新しい発見があるはずです。

コールセンターではお客様と電話でお話をするため、自分の声や話し方を改善したり、ブラッシュアップさせるためのトレーニングが日々行われています。これはもちろん、電話の向こうにいるお客様に、少しでも良い印象を持ってもらうためですし、トレーニングをする側も指導する側も「電話対応のため」と思ってやっています。

電話は相手の顔が見えません。だから難しい、とも言われています。確かに電話対応は難しい。でも、顔が見えない電話対応も、姿が見える対面での対応も「話す」ということに変わりはありません。

「声が高すぎてうるさがられる」「低すぎる声で愛想が無いと言われる」「早口で聴き取りにくいらしい」「子供のころから滑舌が悪くてよく聴き返される」など、「話し方」について何らかの悩みを抱えているという人は多いものです。

今回は、私が今まで出会ってきた人々のさまざまな話し癖のエピソードと共に、その話し癖をどのようにして改善してきたのかをお話します。

今回お伝えするのは「電話対応の極意」ではありません。電話でも対面でも通用する「人に好かれる話し方」の習得方法です。相手の声、話し癖というのは想像以上に印象を左右しますし、記憶に刻まれます。

「話し方なんてそう簡単に変わらないでしょ」と思いますか?確かに「簡単」ではないかもしれません。でも、やれば何かが変わります。まずはやってみることです。

ダメ元でもいいじゃないですか。ダメ元でやってみて、何かが変われば儲けものだとは思いませんか?

 

1.15秒で伝えるあなたの魅力

「相手の第一印象は、会って最初の3秒で決まる」というメラビアンの法則を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。人は相手の姿を見て、たった3秒で「好感が持てる」「苦手なタイプ」など、ある程度相手の印象や性質を決めてしまうというものです。

これが、「話し方や声で第一印象を決める」となると15秒かかります。ちょうどCM1本分です。もし、あなたの最初の3秒が相手にとって好ましくない印象を伝えてしまったとしても、その後の15秒で挽回することは十分可能ですし、最初の3秒で良い印象を持ってもらえた場合は、その後の15秒でさらに良い印象を持ってもらうことができるということです。

 

2.「話し方」は作るものなのか?

私が生まれ持った声は、特に例えようの無い、いたって「普通の声」です。話し方にも大きな特徴があるわけではありません。

ところが、仕事関係の方やお客様と話すとかなり高い確率で「いい声ですね」「話し方に好感が持てます」という意見をいただきます。急な自慢話のようで申し訳ないのですが、本当の話です。そう言ってくださる方の性別や年齢はバラバラで、特にこういう人、という傾向も見えません。

客観的に見てみると、声や話し方などをテーマとして相手の方と話しているわけではないのに、相手が思わず私の声や話し方についての感想を口にしてしまう、ということはそれだけ私の声や話し方についての好感度が高いのではないか、という結論に達します。

しかし、この話しを友人や家族にすると「え?!あなたが?!」「うそでしょ~(笑)」と、聞いた私が少し落ち込むほど驚かれるのです。そんな遠慮の無い意見を聴いて「本当にお世辞を言われただけなのかも」と考えを改めたこともありますが、やはり同じことが繰り返されます。

そこで、少し自分の声や話し方について研究をしてみたところ、意識的に話した時や、改まって話す時の声や話し方と、友人や家族と話す時の話し方が別人のように違うということがわかりました。

つまり、私は「生まれ持った声」が良かったわけでも「丁寧な話し方」ができていたわけでもなく、「人に好かれる話し方を知っている」というだけのことだったのです。

「人に好かれる話し方」は、人によっては自然なものではないのかもしれません。「相手に好かれたい」と思って選ぶ話し方を「作られたもの」と受け取る人もいるでしょう。でも、朝起きて、顔を洗って歯を磨いて、スーツを着て、靴はピカピカに・・これもある意味では「相手に失礼がないようにするための、作られたもの」です。

身なりを整えるように、声や話し方も整える、と考えてみると「当たり前のこと」なのかもしれませんね。見た目や所作で「またこの人に会いたい」と思われるように「声や話し方」で「またこの人と話したい」と思ってもらえたら、うれしいですよね。

 

3.「また話したい」と思われる人の特徴

では、実際に「またこの人と話したい」と思われる人には、どのような特徴があるのかを見てみましょう。あなたの周りにいる人の話し方を思い浮かべてみてくださいね。

3-1.聴きやすい声

これは好みの声というよりも「聴いていたくなる声」「聴き心地の良い声」という意味です。個人の好みの声はまちまちですが、「聴きやすい声」には一定の基準があります。

その基準は「地声ではない」ということです。

「そんなことないよ、地声でもステキな声の人はいる!」という意見もあると思います。確かにそうです。地声でも何とも言えない魅力的な声を持つ人はいますよね。ただこの「地声ではない声が聴きやすい」というのは、「相手に声を届けるために工夫された声」のことであって、必ずしも地声そのものを否定しているのありません。

「相手にこの声を届ける」、つまり「人が聴いている」と意識をしたとき、声の音階がその人の声での「ファ」または「ソ」であるときに、相手にとって聴きやすい声に最も近づくと言われています。

この「ファ」「ソ」が良いというのにはいくつか理由があるのですが、一番わかりやすいのは、「声を出しやすい音階」ということでしょう。

試しに「ドレミファソラシド」を意識的に発声良く音階に乗せて声に出してみてください。「ファ」または「ソ」のときに喉とお腹が一直線につながるような感覚が出ませんか?どんな声であっても、喉とお腹が一直線につながって、その人にとっての「正しい声」が出た時に相手は「聴きやすい」と感じます。

「お腹から声を出す」「発声良く」というと、オペラ歌手のような声を想像する人が多いのですが、そうではありません。その人が持つ声がどのような声であっても、喉だけから、口先だけから出ている声は、聴き取りにくいと感じられることが多く、聴いていることに疲れやすいのです。

「相手に届ける声」は、その「聴きやすい声」である必要があります。「聴きやすい声だな」と思う最低限の条件は「聴いていて疲れない声である」ということです。

「ステキな声だから聴きたくなる」と感じている声の中には、「聴きやすいから聴いていたくなる」という印象が要因となっていることが多くあります。

 

3-2.リズムが合う

人との会話には「リズム」が欠かせません。音楽と同じで、一方が「タン・タン・タン・タン」と話すのであれば、もう一方は「・タン・タン・タン・タン」と表と裏のリズムで話すことによって、お互いのリズムが噛み合います。

「相手にとって話しやすい話し方」というのは、相手の会話のリズムを邪魔せずに言葉を打っていくということです。

たとえば相手が「タタタタタタタタタタタタタン・タタタタタタタタタタタタタタン」という矢継ぎ早なリズムで話すのであれば、こちらも同じように並列したリズムで話すか、もしくは「・・・・・・タン・・・・・・タン」と裏のリズムに徹するかのどちらかでしょう。

よく「早口の人が苦手」「あまり喋らない人が苦手」など、好みによって相手と話すことを避けてしまう人がいます。確かに「これはこちらが話しにくい」と感じる話し方をする人はいるものです。でも、相手の話し方を注意したり、変えようとしたりするよりも、こちら側が「どんなリズムでも乗ってみせる」と覚悟を決めた方が話しが早いのではないでしょうか。

相手を変えるのではなく、自分が変わることで会話のリズムは上手く取れるようになってきます。

「相手のリズムに乗ってやろう!」または「この人のリズムに合う合いの手程度に留めよう」など、リズムを意識することで相手は「この人とは話しやすい」と感じることができるのです。

 

3-3.ラリーが続く

テニスや卓球、バレーボールなどを見ていると「ラリーが続く」という状態を見ることができます。一方が打ってもう一方が打ち返す、この流れが一定の間隔で続く状態をラリーと言いますよね。

相手が「話しやすい」と感じるのは、この「この人との会話はラリーが続く」と感じることも必要です。会話でのラリーは打ち返せば良いというものではありません。「・・・ポーン・・・ポーン・・・ポーン」と「・・・」の部分の間合いが大事です。

相手とのラリーの間隔が「・・・」で成立しているときに「・」の状態で打ち返してしまうと、相手は急なラリーの乱れを感じます。それが「威圧的」「感じが悪い」と思われる要因にもなることがあるのです。

相手へ打ち返す言葉が決まっていたとしても、その会話のラリーの間隔を守って打ち返す、ということだけで、お互いにストレスの無い会話をすることができます。

また、相手から言われたことに対しての答えや言葉が見つからない時に「・・・」で返さなければならないところを「・・・・・・・・・・・ポーン」と変則で返したりすることも同じように避けなくてはなりません。

出すべき言葉が見つかっていない状態であっても「・・・んー」「・・・ちょっと待ってくださいね」など、何らかの言葉を返すということがとても大事です。

会話には無意識の「平等」「対等」という意識があります。お互いに立場が違っても、自分の話し方とのラリーが乱れたり、途切れたりすることは「この会話は平等でない」「対等でない」と感じやすく、その理由が相手の心にあると想像してしまう人は多いものです。

会話が乱れたときに「何か怒ってるの?」、途切れたときに「何かあったの?」と相手に聞かれやすいのはこのためです。

 

3-4.言葉が明瞭

当然のことですが、会話をするということは「相手と言葉を交換する」ということです。

同じ言語で、お互いが認識できる言葉でなければ言葉を交換することはできません。ところが、「相手が何と言ったのかわからない」ということが原因で会話が成立しない、または「さっき相手は何と言ったのか?」と考え続けながら会話が進んでいく、という現象はあちこちで起きています。

これは言葉が不明瞭である場合に多い現象です。ビジネスの場でも「ごぁぅにんください」「せぁぃなってぉぃあす」などの不明瞭な言葉を状況やジェスチャーに助けられて相手に伝えている人がいます。ちなみにこの例は「ご確認ください」「お世話になっております」が正しい言葉です。

身なりが整った笑顔がステキなビジネスマンであっても、口を開いたときに言葉が不明瞭だと、少なからず意外性を感じるという人は多く、人によっては「だらしがない人」と決めつけてしまうことだって珍しくありません。そんな状態では「また話したい」と思ってもらうことは不可能に近いでしょう。

逆に、なんとなく疲れた外観を持つ人であっても、話したときに明瞭な言葉でこちらに言葉を届けてくれると「見かけによらない人」「意外と好感が持てる」など、印象が逆転するものです。

「相手と話す」ということは自己満足では成立しません。

「自分はちゃんと言った」と思っていても、その言葉が相手に伝わらないのであれば「言った」ということにはならないのです。

言葉は相手に伝わって初めて存在します。「この人とまた話したい」と思われるためには「相手に言葉を届ける」ということが欠かせないのはこのためです。

 

4.人に好かれる話し方を磨く

では、実際にどうすれば人に好かれる話し方をすることができるのか?あなたの何を改善すれば、相手が「またこの人と話したい」と感じるのか?ここからはお悩み別の改善方法を解説します。

「自分は○○だからダメ、話す事に向いていない」と決めつけるのは、チャレンジしてみてからでも良いですよね。ここからは実際にわたしが出会った人々のエピソードを交えながらお話します。あなたと同じ悩みを持った人はたくさんいますよ。

 

4-1.好かれる話し方のコツ①「早口」は間で解決!

ベテランオペレーターのAさんは、業務知識が豊富でお客様が話すことについての理解も正確、とても真面目で親切な人です。ところがAさんの通話時間(お客様との電話が始まってから電話を切るまでの時間)が極端に短い通話と長い通話が混在していることがわかりました。本来、通話時間というのはオペレーターさんによってある程度一定します。

Aさんの通話をいろいろと聴いてみると、その原因が「早口」であることがわかりました。「もう一回言って」「え?どういうこと?」と聞き返されることが多く、説明を繰り返すことになり、その分通話時間が延びている。

またはお客様が「はいはい」「・・・・・」のどちらかで通話が異常に早く終わっている、のどちらかだったのです。お客様との会話の主導権をAさんが握っている場面でそれらは起こっていました。

会話の主導権を握っている側は「この話しをこの先どういうルートで進めていくか」ということがわかっていますが、聴いている相手側は「今この瞬間に相手が何を言っているのか」ということに集中しています。そうすると、相手の言ったことを都度認識するための時間が必要になります。

ところがAさんの話し方は早口で、Aさんが言ったことを認識する間が取られていませんでした。そのためお客様は「ただ聴いているとき」は良かったのですが、いざAさんから「~でいらっしゃいますか?」と問いかけられるたびに「え?なに?」「ごめんね、もう一度言ってもらえる?」と聞き返され、Aさんはまた同じことを話すことになっていたのです。当然通話時間は通常よりも長くなっていました。

つまり、相手の理解がAさんの話すスピードについて行けていないため、Aさんからの問いかけに答えられないのです。

またはAさんが話し進める内にお客様の相づちが途切れがちになり、最終的には「わかりました」「またわからないときに電話します」などの言葉で電話が終わっていて、非常に通話時間が短いものだったのです。これは相手が理解することを放棄しています。お客様の中には「ペラペラうるさい」と苦言を呈される方もいらっしゃいました。

そこで、Aさんには「間」を意識してもらうことをお願いしました。早口は性質ですので、根本から改善するには時間がかかります。思考の方向性を変えるところからトレーニングしなくてはならないからです。でも「間」を意識することは、比較的短期間で習得することができます。

「早口」を気にすると話すスピードに気が行きがちですが、「間」を上手くとることができれば、話すスピード自体を変えなくても良いのです。相手に、あなたの言葉を認識するための時間を設ければ、相手はあなたの話しについてきてくれるようになります。

「間」というのは、自分が話す一文の中の「これを聞き取って欲しい」と思う部分の前後に入れる、「1.5秒」ほどの無言の時間です。

たとえば「今夜雪が降ったら明日の出張は飛行機ではなく新幹線でいきましょう」という一文を相手に伝えるとします。これをこのまま間を入れずに早口で相手に伝えてしまうと「あれ?雪が降ったら、飛行機?新幹線だっけ?明日っていってたのは明日雪が降ったら?」と頭の中にある単語が間違って並んでしまいます。

これを「今夜雪が降ったら(1.5秒)、明日の出張は(1.5秒)飛行機ではなく新幹線で(1.5秒)行きましょう」と間を空けるだけで、相手のイメージが追いつきやすくなります。

「今夜雪が降ったら」の後の間で、夜雪が降っているところを想像し、「明日の出張は」の後の間で「朝出張に向かう自分」を想像、「飛行機ではなく新幹線で」の後の間で「空港ではなく駅へ向かう自分」を想像できます。この一瞬の想像ができるかどうかで相手の理解が追いつくか追いつかないかが決まるのです。

その後のAさんは「あなたの話し方はハキハキしていて気持ちが良い」とお客様からほめられるほどになりました。「ペラペラ」が「ハキハキ」にかわったのです。

相手に「伝える」ということができるようになって、改善が必要と思われていた部分が別の魅力に変わったのですね。それからはAさんの通話時間はある程度一定となり、お客様へ同じことを繰り返し説明したり、理解されないまま電話を終えられるようなことはなくなりました。

 

4-2.好かれる話し方のコツ② 「高すぎる声」には腹式呼吸

Bさんはとても活発で、明るくハキハキとした話し方と笑顔がステキなオペレーターさんです。しかし、Bさんは「自分の声が高すぎる」ということをとても気にしていました。

実際にお客様からは「まだ若い人」「経験が浅い人」と判断されることが多く、少し込み入った話になると「詳しい人に代わって欲しい」「あなたの声はちょっとうるさい」と他の人へ対応を代わるように希望されたりすることもありました。しかし通話音声を聴いてみても、Bさんのご案内に不備はありません。

「声が高すぎる」というのは、特に女性に多い悩みです。周囲の人からは「かわいい声でうらやましい」と好評ですが、言葉に深みや説得力が出ないことの原因のひとつとして「声の高さ」があります。また、ご年配の方にとっては、高すぎる声が頭に響いてしまったり、聞き取りにくいという理由で好まれないことが多いということもBさんの悩みを深くしていたのです。

そこでBさんには「腹式呼吸」を心がけてもらうことにしました。Bさんの高い声を無くすのではなく、Bさんの持つ高い声を聞き取りやすくするためです。胸式呼吸のみでしっかりと言葉を出そうとすると、声量に頼ることになり、声の太さをコントロールするための息の量が少なくどうしても声が細くなってしまいまうのです。

Bさんは椅子に浅く腰掛け、鼻から息を吸って話してもらうようにしました。

そうすると、高い声に幅が出て、声の高さがさほど気にならなくなったのです。

それまでのBさんの声は高くて耳につきやすく、Bさんが話しているとその姿を見なくても「Bさんが話しているな」ということに誰もが気が付いていたのですが、腹式呼吸を心がけるようになってからは「誰かと思ったらBさんだった」という状態にまですることができました。

また、Bさん本人も自分の声の印象が変わったことで、お客様から信用されなかったり、うるさがられたりすることが無くなり、さらに自信を持ってお話ができるようになったのです。もちろんお客様から「電話を代って欲しい」と希望されることもなくなり、「明るい声でこちらまで元気が出た」などお褒めの言葉をもらうことも珍しことではなくなりました。

 

4-3.好かれる話し方のコツ③「低すぎる声」には笑声をプラス

Cさんの悩みは「声が低すぎる」ということでした。声の低さによって「暗い」「元気がない」「愛想がない」とお客様から苦言を呈されることも多く、場合によっては「やる気がみられない」などCさんのやる気についてまで疑われるような状態だったのです。

もちろんCさんにやる気がないわけではありません。一生懸命にお客様へ向かってお話をし、手を抜くようなこともありませんでした。ですが、Cさんの通話音声を聴いてみると、お客様がおっしゃることも理解できました。確かにCさんの声には表情を感じにくいところがあり、事務的な印象を覚えたのです。

Cさんの声はとてもステキな声です。音だけで言えば心に直接語りかけられているような、重厚感のある低音です。

そこで、「低い声のまま、相手へ表情を伝える」ということを目標に、まずは積極的に「笑声」を出してもらうようお願いしました。

「笑声(えごえ)」とは、聴いているだけで話している人の笑顔が想像できる声のことを言います。対面であれば表情を豊かにすることで、声の高低に関わらずあなたの表情を伝えることができますが、電話対応では表情を見せることができません。実は「電話対応が上手くいかない」という人の原因の多くは、この「表情が感じられない」ことが原因になっています。

笑声を出す方法はたったひとつで、「実際に笑顔になる」ということです。ぜひ鏡の前で試してほしいのですが、ニコッと笑った顔で暗い声は出せません。暗い声を出そうとしても、なんだか楽しそうな声しか出せないのです。

感情が表情を生むのではありません、表情が感情を生みます。感情を出したい、伝えたいと思うのであれば、表情をコントロールすることが先決なんですね。

最初は戸惑い気味だったCさんも、少しずつ笑顔で話すようになってからは、「あなたの声は低音でとても心地よい」「言っていることに安心感がある」と褒めていただけるようになりました。これは声に出てくる「表情」が伝わったからです。そうすると、Cさんの中に自信が出てきて、ますます印象の良い「声の表情」が出せるようになったのです。

 

4-4.好かれる話し方のコツ④「かぶり癖」ならうなずくこと

Dさんは仕事ができて、頭の回転が早い、とても優秀なオペレーターです。性格も温和で攻撃的な人でもありません。しかし、なぜかクレームに発展する会話が多かったのです。Dさんの通話音声を聴いてみると、その原因はすぐにわかりました。常にお客様の言葉にかぶせて話しをしていたのです。

「かぶった」という言葉は一般的にも広く使われていますが、会話においての「かぶり」というのは、相手が話し終えていない状態で言葉を発して、相手の言葉を押さえつけてしまうことです。Dさんとしては、お客様が話し終えてから話しているつもりなのですが、言葉を返すタイミングが早すぎて、お客様が押されているという印象を受けました。

しかしDさんには悪気がないため、「かぶらない」ということを実践するのはとても難しいことだったのです。自分なりの「今」というタイミングで話しているのですから、当然ですね。そこで、意識以外のことでタイミングを取ることを提案しました。Dさんの意識が「今」と思うタイミングが早すぎるのであれば、意識ではなく一定の時間を計れるメトロノームのようなものが必要です。

そこでDさんには「相手の言葉が終わったら、一度うなずいてから言葉を発する」ということを試してもらいました。

自分の身体の動きを使ってタイミングを計るということです。何かしらの動作をするには、それなりの時間がかかります。そこで「うなずく」という約1秒を計ることができる方法にしました。

「相手が話し終えたら、一度うなずいてから話す」というルールを実行したことによって、嫌でも適切な間があきます。「かぶる」ということが不可能な状態を作り出すことで、Dさんのかぶり癖は改善されました。

お客様からは「打てば響くような対応」「すぐに答えが出てくるので頼りがいがある」と、Dさんがもともと持っている能力を適切に評価してもらえるようになったのです。

 

4-5.好かれる話し方のコツ⑤「滑舌が悪い」は舌を鍛えて

TV番組の影響などで「自分は滑舌が悪い」ということに気がつく人は、以前に比べて増えてきています。それは会話をする相手へも向けられ「この人滑舌が悪くて聴き取りにくい」など、と感じる人はかなり多いのではないでしょうか。

Eさんはいつも「自分の滑舌」を気にしていました。お客様からはもちろんですが、身近な家族や友人からも「何言ってんのかわかんない(笑)」など、冗談半分で言われることも悩みだったのです。どんな話題であっても、自分が発した言葉が「わからない」と言われると、誰だって少なからずショックを受けるでしょう。

Eさんは一生懸命に話しているのですが、確かに滑舌が悪く、聞き取りにくいというよりも「気になる」「話しに集中できない」ということも感じました。そこでEさんが話している様子を観察してみると、原因と思われることが3つありました。

まずは「口が開いていない」ということです。言葉は口から出てきます、その口が開いていないのですから、言葉がハッキリしないということは当然です。次に「口元を隠している」です。これは滑舌が悪いことによってについたクセだということでしたが、話すことに自信がないために、つい手を口元にあててしまっていました。言葉は空気に乗って伝わるので、口元に空気の伝わりを邪魔するものがあれば、やはり言葉は明確に伝わりません。

そして最後は「舌が動いていない」です。Eさんの真似をして、口を開けずに話してみると舌を動かすことができませんでした。そこでEさんには「まずは舌を動かすこと」を試してもらったのです。舌を動かすには筋肉を使います。筋肉使われないと衰えますよね。舌を意識的に使って話すということを始めてからしばらくの間、Eさんは「話すってこんなに疲れるんですか?」と驚いていました。舌を使う筋肉が鍛えられていることを実感したのです。

舌を動かそうとすると、自然と口が開きます。舌を動かして言葉を発するということに慣れたころ、話すときのEさんの口はちゃんと開いているようにもなりました。

一言一言ではなく、一文字一文字を意識して話すと、舌がきちんと使われるようになります。そうすれば滑舌は良くなり、相手との会話がスムーズになります。結果として、話すことへの自信を手に入れたEさんは、口元に手をやるクセもなくなり、家族や友人から滑舌についてからかわれることもなくなったのです。

 

4-6.好かれる話し方のコツ⑥「無駄な口癖」も気が付けばセーフ

世の中で「バイト言葉」と呼ばれているいくつかの言葉があります。「よろしかったでしょうか?」「~の方」「~になります」など、誤った敬語使いのことです。この「バイト言葉」が身体に染みついてしまったFさんは、お客様から「その言い方やめて」「敬語も使えないの?」とお叱りを受けることが多く、話すことに自信を無くしていました。

Fさんは決して非常識な人などではなく、とても常識的で相手に対しての思いやりもしっかりと持っている人です。ただ、これまでいろんなところで耳にした「バイト言葉」が口に馴染んでしまって、無意識に誤った敬語を使ってしまうことを、自分でどうすることもできませんでした。

自分のデスクに「よろしいでしょうか?」「~でございます」など、正しい敬語を書いた付箋を貼って意識をしたり、独り言で正しい敬語を繰り返しつぶやいてみたりもするのですが、いざお客様と話し出すと話しの内容に気が行ってしまって、また誤った敬語を使ってしまった、と落ち込む毎日でした。

そこで「誤った敬語を話したときに、それに気が付くことを目標にする」ということをお願いしてみました。

そのときのお客様へは申し訳なかったのですが、クセは急に直るものではありませんので、まずは自分のクセが出たときに「今クセが出た」と気が付くことから始めようと考えたからです。

真面目なFさんは自分が誤った敬語を使うたびに「正」の字でカウントを始めました。正の字は最初は少なく、だんだん多くなり、そして少なくなっていき、最後はなくなりました。これは、自分のクセが出たことを認識できていないときは正の字が少なく、気が付くことが普通になってくると多くなります。そこから意識をして減少させるとだんだん正の字が少なくなった、ということです。

これは「バイト言葉」以外の口癖にも有効です。「あのー」「あっ」「えーと」など、自分で「不要なクセ」と思えるものがあれば、何にでも使うことができます。クセが出るたびに「また言っちゃったな」「今言ったな」と自分で認識ができるようになれば、あとはそのクセがどれくらい出ているのかを知ることができます。

誰だって、知らないことをどうにかすることはできませんよね。知っているからコントロールできるようになるのです。

「言ってはいけない!」とプレッシャーをかけるだけでは、かえってそのクセを意識してしまい、改善することができません。「気が付くことができれば、言ってもいいんだ」と開き直ることで、頭の中を落ち着かせることができます。プレッシャーがかからなければ「この言葉、おかしいかも」「要らない言葉かも」と気が付けるようになるのです。

その後Fさんの「バイト言葉」は改善され、「なんであんな言葉を使っていたのか、自分でもわかりません」と心底不思議そうな顔をしていました。これはFさんの頭の中で「バイト言葉」や「不要な口癖」が正しく認識された証拠ではないでしょうか。

 

4-7.好かれる話し方のコツ⑦「ダラダラ話す」には物語を

Gさんはいつも、お客様から「あなたの話しは要領を得ない」「どういうことかわからない」などと、ご指摘を受けていました。Gさんは業務知識を十分持っているだけでなく、とても親切な人で「お客様が正しく理解してくれるだけで終わらず、より良い情報を伝えたい」と考えている人でした。Gさんのそんな性格がどうしてお客様を怒らせることになるのでしょうか?

Gさんの通話音声を聴いてみると、その原因がわかりました。「話しが長い」のです。または「長く感じる」と言った方が良いかもしれません。Gさんが「良かれと思って」伝えていることが、お客様の求めている回答や案内を埋もれさせてしまっていました。

たとえば、お客様から「Aという商品は何に使うの?」と質問をされたとしたら「はい、Aはとても人気の商品で、○○に使えるのですが、××もできますし、~が欲しいという人にも好評で、△△を使えばさらに■■できますし、それから~」と答えてしまいます。

確かにこれでは、Gさんが話した言葉の中から、お客様自身が回答を見つけ出さなくてはならず、Aという商品のことを知らないお客様にとってそれは困難なことです。これが「要領を得ない」と言われる要因でした。

そこで、Gさんには「物語」を参考にしてみるようにお願いしました。

昔話やおとぎ話などは、子供にも理解ができるように文章が構成されています。「むかしむかし、あるところに○○さんと××さんがいました」と言い切ってから、次の「ある日~」と話しが続いていきます。この「短い文章をいくつも用意することで、内容を知らない相手にも理解をしてもらう」という方法は、大人同士でも大変有効に使うことができます。

「Aという商品は○○に使う商品です」「Aは××もできます」「~が欲しいという人にも好評です」という風に、一文を短くすることで相手は内容の理解をしやすくなります。「かぶり」と同じで、相手には「理解やイメージをする時間」が必要です。この時間を作るために、文章を細切れにするということです。

せっかく持っている知識や親切心も、相手に伝わらなければ無いものと同じです。伝わって初めて役に立ったり、思いやりを感じてもらえます。Gさんは「あなたって何でも知っているのね」「こんなに親切に教えてもらえると思わなかった」など、お客様からお礼の手紙をいただくようにまでなりました。

 

5.コミュニケーションを作り上げるのは「話し方」

「コミュ障」という言葉が広まったことで、ちょっとしたことでも「自分はコミュ障だから」と自虐的に言ってしまう人がとても多くなりました。でも、社会では「あの人はコミュ障だから仕方ないよね」と優遇してもらえるわけはありません。そもそも「自称コミュ障」の人は「人に好かれる話し方を知らない」というだけのようにも思います。

やり方がわからないことは、誰だって「できない」と言います。逆に「やり方がわかれば、できないことはない」とも思いませんか?

人間は言葉を話します。というより、話さなければコミュニケーションを取ることが難しい動物です。自分のことを知ってもらうため、相手のことを知るため、お互いの気持ちをすりあわせるために「話す」のです。

本当は「人に好かれる話し方」をしなくても良いのかもしれません。コミュニケーションが取れるのであれば、相手に好かれることは不要という考え方の人もいるでしょう。ただ、「好かれる話し方」は得です。人間は「自分はこの人が好き」「この人は仲間」と思えば、コミュニケーションを積極的に取ろうとしてくれます。そうすると、必然的にコミュニケーションの質が上がるのです。

相手に好かれる話し方をする、ということは、あなたのためだけにすることではなく、また相手のためだけにすることでもありません。お互いがお互いのために「好かれる話し方」をすることで言葉異常のものを得ることができます。

 

6.「話し癖」には裏がある

今回は自分の話し方に悩みがある人の例を挙げて、それぞれの改善方法をご提案しました。わたしは仕事として、さまざまな話し方を改善してきました。仕事だから改善した、と言っても良いでしょう。

私は、自分の話し方が好きでも嫌いでも、それは自分の個性だと思います。話し癖がある人が私は嫌いではありません。それはその「話し癖」がその人の個性のひとつだと思うからです。

「自分の話し方に悩んでいる」という人は、自分の話し癖の裏にあるものを見つけてみてください。「不安を感じてほしくない」「穏やかな気分でいてほしい」「威圧的だと感じて欲しくない」など、きっとあなたなりの理由があるはずです。

「好かれる話し方」は、あなたの持つその気持ちをもっと正確に伝えるための方法のひとつです。「またこの人と話したい!」と思われるような「好かれる話し方」を、身だしなみのひとつとして取り入れてみましょう。

 

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