アナウンサー
専門脳科学・心理学を使ったあがり症の克服
「ミスに気づいた瞬間から、上司の顔を見るのがこわい」「謝るタイミングを逃して、明日どう切り出せばいいか分からない」。仕事で謝る場面は、何を言えばいいかと同じくらい、本番で言葉がちゃんと出てくるかが不安になるものです。
この記事では、元NHKエグゼクティブアナウンサー・吉松欣史の監修のもと、ビジネスの謝り方の4つの順番と相手別の例文、タイミングを逃した時の切り出し方、緊張で頭が真っ白になる時の準備を紹介します。
- 謝罪が伝わる4つの順番と30秒の例文
- タイミングを逃した時と、上司・取引先・同僚あての例文
- 謝る場面で頭が真っ白にならない準備と、詰まった時の一言
ビジネスの謝り方と謝罪の言葉:「お詫び→事実→原因と対策→もう一度お詫び」の4つの順番で話す

謝罪がうまく伝わらない原因の多くは、言葉選びよりも話す順番にあります。先に事情や言い訳が出ると、相手は責任を逃れようとしていると受け取ります。次の4つの順番を決めておけば、焦っていても話が崩れません。
- 1. お詫び最初に「申し訳ございません」と謝る
- 2. 事実何が起きたかを短く伝える
- 3. 原因と対策なぜ起きたかと、次にどうするか
- 4. もう一度お詫び締めにもう一度、頭を下げる
※出典:Lewicki, Polin & Lount (2016). An Exploration of the Structure of Effective Apologies. Negotiation and Conflict Management Research(ScienceDailyの紹介記事)
4つの順番の「事実」と「原因と対策」が、この責任を認めることと直し方を示すことに当たります。お詫びの言葉を重ねるより、何が起きて次にどうするかまで話す方が、相手に誠意が伝わります。
最初の一言は言い訳より先に「申し訳ございません」
謝る場面で一番避けたいのは、事情の説明から話し始めることです。「実は先方の連絡が遅れて」と始めると、内容が正しくても言い訳に聞こえます。事情は3つ目の「原因」で話せば十分なので、最初の一言はお詫びと決めておきます。
「申し訳ございません」「失礼いたしました」「ご迷惑をおかけしました」の使い分け

「申し訳ございません」は、自分の非を認めて謝る時のいちばん丁寧な言葉で、上司にも取引先にも使えます。「失礼いたしました」は、言い間違いや確認漏れのような小さな不手際に向いた言い方です。
「ご迷惑をおかけしました」は、相手に手間や負担をかけたことへのお詫びで、「申し訳ございません」と組み合わせて使います。社内でよく使う「すみません」は、取引先や重いミスの場面では軽く聞こえます。言い換えはビジネス敬語の早見表にまとめています。
4つの順番で話す30秒の例文
4つの順番に当てはめると、上司への報告は30秒ほどで収まります。長く話すほど誠意が伝わるわけではありません。短く話して相手が質問できる間を作る方が、その後の対応の話に進みやすくなります。
仕事のミスで謝るタイミングを逃した時の謝り方:翌日・週明けでも「昨日の件ですが」から切り出す

謝るのはその日のうちが基本。遅れても謝らないよりずっといい
謝罪は早いほど相手の気持ちが落ち着きやすく、その日のうちが基本です。ただ、翌日になったからと謝らずにいるのは逆効果です。相手は覚えているのに何も言われないと、「気づいていないのか」「なかったことにしたいのか」と受け取ります。
遅れた謝罪は、遅れたこと自体も一緒に謝れば、謝らないままよりずっと信頼が戻ります。時間がたつほど言い出しにくくなるので、「次に顔を合わせた最初のタイミング」と決めて動くのがこつです。
翌日・週明けに切り出す一言と例文
切り出しは「昨日の〇〇の件ですが」と、どの件かを先に伝えます。相手が中身を思い出せるので、急に謝られて戸惑うことがありません。そのあとは4つの順番どおりに話し、最後に謝るのが遅れたことも添えます。
その場でごまかしてしまった時も、言い方は同じです。「あの後考えたのですが、原因は私の確認不足でした」と、自分から事実を言い直します。勇気はいりますが、後から別の人に指摘されるより、ずっと傷は浅く済みます。
メールやチャットで済ませてよい場合と、対面にする場合

相手に実害のない小さな行き違いなら、チャットやメールで謝っても構いません。一方、相手に手間をかけた、取引先に影響が出た、怒らせてしまった時は、対面か電話で謝ります。文字だけの謝罪は、声の調子が伝わらず軽く受け取られやすいからです。
相手が忙しくてすぐに時間が取れない時は、まずチャットで「〇〇の件でお詫びしたいことがあります。5分ほどお時間をいただけますか」と送ります。この一文が謝る意思の表明になり、タイミングを逃し続けることを防げます。
相手別の謝り方と例文:上司・先輩/取引先(電話・訪問)/同僚・後輩

4つの順番は誰に謝る時も同じですが、相手によって言葉の硬さと伝える場所が変わります。ここでは、仕事のミスでよくある場面ごとに、そのまま使える例文を紹介します。名前や数字を、自分の状況に置き換えて使ってください。
上司・先輩に口頭で謝る例文:締め切りに遅れた・数字を間違えた

上司に謝る時は席まで行き、「今お時間よろしいでしょうか」と声をかけてから話します。上司が知りたいのは、謝罪の言葉より「何が起きて、どこまで影響があるか」です。事実と対策を短く伝え、判断が必要なことは指示を仰ぎます。
取引先に電話・訪問で謝る例文:納期遅れ・請求書の誤り

取引先への謝罪は、メールより先に電話で入れるのが基本です。第一声で会社名と名前を名乗ってから、すぐにお詫びを伝えます。影響が大きい時は上司と一緒に訪問し、同じことが起きないための仕組みまで説明します。
お客様の強い怒りに向き合う場面では、謝り方に加えて、話を最後まで聞く手順が大切になります。電話や窓口での対応の流れは、クレーム対応の基本5ステップの記事で詳しく紹介しています。
同僚・後輩に謝る例文:仕事を押し付けた・頼まれごとを忘れた

同僚や後輩への謝罪は、立場が近いぶん後回しにしがちです。ただ、毎日一緒に働く相手だからこそ、小さな不満が積もると仕事が回りにくくなります。言葉は少しやわらかくて構いませんが、何が悪かったかは具体的に言いましょう。
後輩に謝る時も、先輩だからと言葉を濁す必要はありません。「自分のミスだった」とはっきり言う先輩の姿は、後輩にとってミスをした時の手本になります。謝ったあとに感謝を一言添えると、関係はかえって近くなります。
自分が悪くないのに謝る時は「不快にさせたこと」と「非を認めること」を分ける

謝る範囲を言い分ける言い方の例文
まずは相手の気持ちに対して謝り、事実はそのあと落ち着いて確認します。「ご心配をおかけして申し訳ございません」は相手の気持ちへのお詫びで、ミスを認める言葉ではありません。この言い分けを覚えると、悪くないのに全部を背負わずに済みます。
確認して自分の側にも落ち度が見つかったら、その時点で改めて4つの順番で謝ります。先に気持ちへのお詫び、事実が分かってから責任へのお詫びと2段階に分けると、相手との話がこじれません。
「とりあえず謝る」が逆効果になる場面

何でもとりあえず謝ると、その場は収まっても、自分の責任ではないことまで認めた形になります。特に取引先との金額や納期の話で謝りすぎると、後から「そちらのミスだと認めましたよね」と言われかねません。事実が分かるまでは、責任を認める言葉は控えます。
社内でも、上司の指示どおりに進めて起きた問題を、自分のミスとして謝ってしまう人は少なくありません。その場合は「ご指示いただいた手順で進めましたが、結果としてこうなりました」と事実を伝え、次の進め方を相談する形にします。
印象を悪くする謝り方とNGワード:言い訳・「でも」・「そんなはずは」・謝罪の連発

謝っているのに、かえって相手を怒らせてしまうことがあります。原因の多くは、謝罪のあとに付け足した一言です。よく出てしまう言い方と相手への聞こえ方、言い換えを並べました。言葉の禁句はビジネスの禁句と言い換えの記事にもまとめています。
謝罪で避けたい言い方6つと言い換え
| 言い方 | 相手にはこう聞こえる | 言い換え |
|---|---|---|
| 「でも」「ただ」で事情を話す | 反省していない | 「〜が原因です」と原因として話す |
| 「そんなはずはありません」 | こちらを疑っている | 「すぐに確認いたします」 |
| 「規則ですから」 | 突き放された | 「ご期待に添えず申し訳ございません」 |
| 「悪気はなかったんです」 | 責任を逃れたい | 「私の確認不足でした」 |
| 「誤解を与えてしまい」 | 受け取った側が悪い | 「説明が足りず申し訳ございません」 |
| 「すみません」の連発 | 中身がなく軽い | 4つの順番で丁寧に謝る |
中でも多いのが「誤解を与えてしまい」です。丁寧に聞こえますが、裏返すと「あなたが誤解した」という意味になります。謝る時は、相手の受け取り方ではなく、自分の言動を主語にすると、言葉がそのまま誠意として届きます。
声の出し方も、言葉と同じくらい印象を左右します。小さな声で早口に謝ると、内容が正しくても言い訳をしているように聞こえます。謝る時こそ、いつもより少しゆっくり、語尾まではっきり言い切ることを意識してください。
謝る場面で頭が真っ白になる・声が震える時の準備

怒っている上司や取引先を前にすると、用意した言葉が出てこない、声が震えるという人は少なくありません。これは誠意が足りないからではなく、強い緊張で頭が働きにくくなっているだけです。次の3つを準備しておくと、言葉が出やすくなります。
- キーワード3つのメモお詫び・事実・対策を単語で書いておく
- 低くゆっくりの声語尾まで言い切れる速さで話す
- 詰まった時の一言時間をもらう一文を決めておく
最初の一言とお詫び→事実→対策の順番だけを、キーワード3つのメモにしておく
謝る言葉を一字一句覚えようとすると、1語忘れたところで先が出てこなくなります。メモに書くのは「見積書・未送付」「金額確認を後回し」「15時までに送る」のような単語だけで十分です。順番さえ手元にあれば、言い回しが変わっても話は止まりません。
元NHK
アナウンサー
ヨシ
ルーキー時代、祇園祭の生中継を任されたとき。コメントを一字一句、丸暗記して本番に臨んだのに、始まった瞬間、全部、飛びました。
32年間生放送に立ち続けた吉松も、新人のころは丸暗記した言葉が本番で飛んだ経験を持っています。言葉は丸ごと覚えるものではなく、順番に沿ってその場で組み立てるものと考えると、本番で止まりにくくなります。
声を低く、ゆっくり、語尾まで言い切る

緊張すると、声は高く速くなりがちです。謝る前に一度息を吐き切ってから、いつもより少し低い声で話し始めてください。語尾の「ございません」まで言い切ると、声が多少震えていても、謝る気持ちははっきり相手に届きます。
謝りに行く前に、空いている会議室などで一度だけ声に出してみるのもおすすめです。頭の中で読むのと声に出すのとでは、言いやすさがまったく違います。声に出して言いにくい言葉は、その場で言いやすい言葉に替えておきましょう。
責められて言葉が出ない時の一言:「申し訳ございません。いま整理してお伝えします」

強く責められて頭が真っ白になったら、黙り込むより「申し訳ございません。いま整理してお伝えします」と一言はさんでください。この一言で数秒の間が生まれ、手元のメモを見る余裕ができます。黙ったままでいるより、相手も話を待ってくれます。
※出典:Savitsky & Gilovich (2003). The illusion of transparency and the alleviation of speech anxiety. Journal of Experimental Social Psychology, 39, 618-625(Wikipedia「Illusion of transparency」の紹介)
声の震えは、自分が思うほど相手には伝わっていません。謝る場面に限らず、人前で声が震える悩みが続く方は、声が震える緊張を和らげる3つの習慣の記事も参考にしてください。
元NHKエグゼクティブアナウンサーが大切にしている「伝わる話し方」の考え方

監修の吉松欣史は、1991年にNHKに入局し、32年間アナウンサーを務めました。サッカーW杯南アフリカ大会やロンドンオリンピックの生放送を担当し、現在は法人や個人向けに話し方とコミュニケーションの研修を行っています。
元NHK
アナウンサー
ヨシ
実は、入社当初の私は、人前に立つと声が震え、頭が真っ白になっていました。
その経験から吉松が指導で大切にしている柱の1つが、「どう見られるか」への意識を「何を届けるか」へ向け直すことです。謝る場面に置き換えると、どう思われるかより、何が起きて次にどうするかを相手に届けることに意識を向けることです。
「怒られたくない」「評価が下がる」と自分のことばかり考えるほど、緊張は強くなり、言葉は言い訳に寄っていきます。相手が知りたい事実と対策に意識を向けると、謝罪の中身がはっきりし、自分の話し方への不安も小さくなります。
ビジネスの謝罪でよくある誤解・注意点

💡 何度も謝るほど誠意が伝わるわけではない
お詫びの言葉を何度も繰り返すと、かえって中身がないように聞こえます。謝罪の言葉は最初と最後の2回にとどめ、その間は事実と対策を伝えることに使いましょう。
メールの方が丁寧だと考えて、取引先への謝罪を文面だけで済ませる人もいます。けれど影響が大きいミスほど、まず電話で声を届け、メールは記録として後から送る順番の方が、誠意は伝わりやすくなります。
謝ったら全部の責任を負わされると心配して、謝ること自体を避ける人もいます。相手の気持ちへのお詫びと責任を認めることを分ければ、必要以上に背負わずに謝れます。謝ることは負けを認めることではなく、話を前に進める最初の一歩です。
⚠️ つらさが長く続くときは
上司や取引先と話すことを考えると眠れない、動悸や吐き気が何日も続く、といった状態が2週間以上続くときは、一人で抱えずに医療機関や、厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」の相談窓口を利用してください。
人前で話す時の緊張(あがり症)が悩みの中心の方へ。上司への報告や謝罪のたびに頭が真っ白になる方に向けて、吉松欣史が緊張と付き合いながら話すための考え方をお伝えする無料のオンライン勉強会があります。
講師の吉松欣史は、NHKで32年間アナウンサーを務め、サッカーW杯とオリンピックの生放送を担当した元NHKエグゼクティブアナウンサーです。勉強会は無料のオンライン形式で、60分・顔出し不要です。人前で話す時の緊張が悩みの中心の方に向けた内容です。
※通院中・治療中の方は、この記事の方法より主治医の方針を優先してください。
\ 人前で話す時の緊張が中心の方へ /
ビジネスの謝り方についてよくある質問
Q謝罪の言葉は何回言えばいいですか?
Q上司が怒っていて話を聞いてもらえない時はどうすればいいですか?
Q取引先への謝罪に手土産は必要ですか?
QLINEやチャットで謝ってもいいですか?
Q「すみません」で謝るのは失礼ですか?
Q謝っても許してもらえない時はどうすればいいですか?
謝る場面で言葉が出なくなるのは、あなたの誠意が足りないからではありません。人前で話す時の緊張が中心の方は、吉松欣史の無料オンライン勉強会(60分・顔出し不要)で、緊張と付き合いながら話すための考え方に触れてみてください。吉松自身も、入社当初は人前に立つと頭が真っ白になっていた講師です。
講師の吉松欣史は、NHKで32年間アナウンサーを務め、サッカーW杯とオリンピックの生放送を担当した元NHKエグゼクティブアナウンサーです。勉強会は無料のオンライン形式で、60分・顔出し不要です。人前で話す時の緊張が悩みの中心の方に向けた内容です。
※通院中・治療中の方は、この記事の方法より主治医の方針を優先してください。
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元NHKアナウンサー吉松欣史が漫画で解説あがり症の正体、無料の漫画で読めます発声の問題?あがり症?選ぶ前に違いを知る悩みの見分け方を無料で読めますLINEで無料漫画を読む

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