東証一部企業の人事部が教える今日から実践できる「話し上手になるコツ

東証一部上場企業の部品メーカーに勤務している現役人事パーソン、松本です。

人材育成業務14年(内1年は海外人事)、採用業務6年の経験があり、学生や若手社員のキャリア教育やビジネスマナー教育、コミュニケーション教育等を担当してきました。

仲間同士のおしゃべりならよく話しをするのに、人前に立ったとたんに「話し下手」になる方って意外に多いですよね。しかし、それではビジネスマンとしては失格です。

「口ベタは治らない。」「人前で話すのは苦手。」という方、安心してください。
ちょっとしたトレーニングで、ぐんぐんとお話上手になりますよ。

今からご紹介するのは、実際に職場内の社員を対象に行っていたトレーニングメソッドを含めた「コツ」です。

人前で真っ赤になって、しどろもどろしていた若手社員が、今ではお客様の前で堂々と「会社説明」ができるようになりました。

よくOFF-JTで1日や2日間のプログラム「コミュニケーション研修」や「プレゼン研修」「ロジカルシンキング研修」などがありますよね。

しかしこれを受講したからといって、すぐに能力がアップすることはありません。(人事担当者が言うことではありませんが。)

「ちょっとしたトレーニング」を「意識して」「繰り返し」「継続する」ことが、能力アップの一番の近道なのです。
そんな「ちょっとしたトレーニング」と「ちょっとしたコツ」を紹介します。

 

1.話し上手は姿勢から

最近のビジネスマンに多いのは、まず「姿勢が悪い」ということです。

「話す」「発言する」時は、周りの視線を一気に集めることになりますね。

「人は見た目が9割」と言いますが、例え「良い話」をしても、妙に身体が揺れたり、だらだらしていたり、逆にガチガチになっている姿勢、振る舞いだけで、話の内容の価値が下がってしまいます。

まずは、「まっすぐに姿勢よく立つ」ということを心がけてください。

チェック項目は下記の5つです。

  • 足幅は自然に開く。女性はかかとをつけて、つま先は握りこぶしくらい開く。(男性は肩幅よりやや狭く、目安握りこぶし2つ分くらい開けてたつ。)
  • 頭の上から糸で釣られているように、頭を高い位置に。
  • あごは自然に引く。
  • 背筋を伸ばして、肩の力は抜きます。
  • 下腹に力をいれて引っ込める。

まっすぐに立つ姿勢を毎日のルーティンとして、「意識する時間」を設けてみると、立ち姿が格段に良くなりますよ。

 

2.声の第一印象ワンランクアップ・トレーニング

声にメリハリがなく、聞き取りにくい方に多いのは、「口の開き」が小さいということです。

「口の開き」が小さいと、表情筋が動かず、暗くおとなしい印象になりますし、声のボリュームも小さく、結果、聞き取りにくくなってしまうのです。

発声、発音トレーニングメソッドは多種多様ありますが、今回は私がよく社員の研修前や研修中に使うものを紹介します。

 

①母音の発声・発音

「ア」は口を縦に開け、顎を大きくさげて発音します。
「エ」は「ア」よりも顎を少し上げ、口を横楕円形にします。
「イ」は口を両横に引くように、平らな形で発音します。
「オ」はくちびるを「ア」よりも小型の縦楕円形にして発音します。
「ウ」は円形にくちびるをすぼめ、ローソクの火を消すような気持ちで発音します。

上記の形を意識しながら、「ア、エ、イ、オ、ウ」を数回繰り返します。

「アー、エー、イー、オー、ウー」とそれぞれ10秒伸ばして発声するロングトーンも数回繰り返します。
このトレーニングは自分ひとりでもできますよね。

大きな声を出すことは、リラックス効果や、ポジティブ思考にも繋がると言われていますからオススメです。

 

②滑舌法

発音を明確にし、スムーズに話しをするためには滑舌法で口の体操をします。

早口言葉を応用しますが、あくまで「滑舌」ですので、基本はゆっくり、はっきり、くっきり、一音一音を確かめながら発音すると、良い練習になりますよ。

滑舌法でよく使用する「文章」紹介しておきます。

  1. お綾や親におあやまり お綾や八百屋におあやまりとお言い
  2. この竹垣に竹立て掛けたのは 竹立て掛けたかったから竹立て掛けた
  3. 東京特許許可局 農商務省特許局 日本(にっぽん)銀行国庫局 特許局と国庫局

滑舌法の後に、顔周りの筋肉がほぐれていることを実感できると思いますよ。

 

3.ブレインストーミングで考える力をトレーニング

アイディア出しや課題抽出など集団発想法ともいう「ブレインストーミング」ですが、私は日常的に新入社員や若手社員と一緒にやっていました。

会議室で改まってするというよりは、朝礼や昼礼後の30分程度、オフィスの隅っこで、週1回くらいの頻度で手軽にやっていました。

新入社員や若手社員に、職場の問題や目標に対して「当事者意識」をもって、自分で考えて発言する力をつけてほしかったからです。
だからテーマは、最初はすごく簡単なことから初めます。

「よい営業マンとはどんな営業マンか。」
「デスクの上をキレイに保つためには。」
「自己啓発など勉強を習慣づけるにはどうしたらいいか。」などです。

最終的には組織目標やビジョンなどハードルの高いテーマも自然に話し合えるようになります。

やり方を紹介します。

  1. 持ち物は手のひら程度のメモ用紙を、参加人数×20枚程度と筆記用具があればOK。
  2. テーマに応じて、15分間で思いついた意見やアイディアをメモ1枚に一つ書いていきます。目標は15枚~20枚/一人。
     自由な発想で、とにかく思いつくことをガンガン書いていきます。この時点では質より量でOKなのです。
  3. 15分たったところで、グループ内で発表していきます。一人ひとつずつ、トランプを出す要領で意見を出していきます。とにかく「自分の考え」を発言することが大切です。
  4. みんなの意見をききながら、またアイディアを書き足していくこともOKです。
  5. 最後に意見をKJ法でまとめてもいいし、みんなの意見の中から、今すぐ自分で実行できそうなのはどれか等ざっくり話し合ってもいいと思います。

 

大切なことは、

①時間をかけない。(30分なら30分で終わりにする。)
②手軽に行う。(人数は2名からでも出来るし、場所はオフィスの隅っこでOK)
③問題や課題、目標、自分の頭で考えること。
④参加者全員で問題、課題、目標を共有できるメリットがある。
⑤自分の考えを発言する。
⑥中身より「繰り返し考えること」と「繰り返し発言すること」が重要。

やり続けていると、新入社員や若手社員でも会社や職場の問題や課題について考えることと、発言することが当たり前になってきます。繰り返し、継続することが、ぐんぐんと当事者意識と思考力を育てることに繋がります。

続けていると、新入社員や若手社員に混じって、時には課長や部長も飛び入り参加することがあり、コミュニケーションの場としても活用していました。オススメですよ。

 

4.「話し上手」は「聞き上手」

人前に立って話すと、聞いている人の顔がよく見えるものです。
一生懸命に話しをしていても、聞き手が「聞く態度」でない場合はガックリきます。

聞き手にも話し手へのマナーがあるのです。ポイントは3つです。

 

①アイコンタクト

まず話し手の目、もしくは顔を見ましょう。睨みつけるような目ではなく、柔和の視線をおくってくださいね。

 

②リアクション

うなずく、呼びかけに応える、返事をする、笑う。

リアクションは「あなたの話を聞いていますよ。」というサインです。

無反応ほど話しにくいものはありません。話し手へのリアクションは最低限のマナーです。

 

③メモをとる

聞いている人がメモをとる態度をとってくれているだけで、話し手は聞き手を「信頼」することでしょう。
「よい話し手」になるためには、まず「よい聞き手」になることを心がけてください。

 

5.質問力アップの「コツ」

質問をするというのは、「聞く」という行為の締めくくりで、「あなたの話を聞いていました。」という「証」です。

質問の基本は「わからないことを尋ね、発言の真意を確認すること」です。決して話し手を窮地に追い込むことではありません。

「揚げ足の取るような質問」「自分の知識を誇示するための質問」はするべきではありません。

質問のパターンは3つです。
質問は相手に確認をしたり、相手の考えや情報をさらに深く聞き出したりするのに役に立ちます。

「こんな質問をしたらバカにされるのでは。」などと考える必要はありません。あなたが理解できなかったことは、他の人も理解できなかった可能性が高いのです。

質問することで、多くの人の理解が深まると考えましょう。

 

質問力を鍛えると本質が見える!?具体的な3つのテクニックと高め方

2017.05.16

 

①確認パターン

聞いて理解したことが間違いないかを確認します。
「この点については、~ということですね。」など、話の内容や相手の真意を確かめます。

 

②明確パターン

肯定か否定か、AかBか、2つのうちのどちらかを答えてもらう質問方法です。

「それは○ですか、×ですか。」聞かれた方は「はい」「いいえ」、「○です」「×です」と簡単に答えることができます。
聞きたいことがハッキリしているときに使います。

 

③具体化パターン

抽象的な話や内容を具体的にするための質問です。

具体例を何か聞かせてください。
それはいつのことですか。
それは誰が実施するのですか。

5W1Hで質問をすれば具体的な答えが引き出せます。

このパターンに当てはめて考えれば、質問力が自然と上がってきますよ。

 

6.1分間スピーチトレーニング

スピーチは「話す」ということの集約です。

話の内容、組み立て、言葉の選び方、敬語、音声・・・、自分の考えや思いを相手に伝えるための全ての要素が含まれます。
スピーチを朝礼など取り入れてトレーニングをしている企業もありますが、「やればいい」というものではありません。

「スピーチ」の準備、スピーチ原稿、実習というように、まずは「スピーチ」を実際に行なうためには、どのような準備をすれはいいかを学習した上で行うと、めきめき上達していくこと請け合いです。

 

①1分間スピーチの準備

スピーチでは、自分でテーマを決める場合と、テーマが与えられている場合があります。

どちらも準備として情報を集め、自分の体験やエピソードを盛り込み、いかに内容を充実させ、相手が興味を持てるスピーチにするかを考えましょう。

 

②スピーチを原稿にする

1分のスピーチを想定すると300字から350字程度になります。
慣れないうちは、まずは原稿を書くようにしましょう。

手順としては

  1. テーマについて、思いついたことばや短文をメモに書き出す。
  2. その中から主題を見つける。
  3. 主題にふさわしい情報、自分の経験・エピソードを集め、話の展開を考える。
  4. 初めは長さにとらわれず、言いたことを原稿にする。
  5. 4)の文章を繰り返し読みながら、無駄なことばや不要な修飾語や形容詞を省いていく。
  6. 文のねじれ、話の筋道が通っているか、話し言葉で書かれているか、耳で聞いてわかりやすいかを整理していき、300字~350字におさめていきます。

ここで1分スピーチの長さになります。

「スピーチはライブ」であって、その場の生の勢いが大切であると言われています。原稿を作ると、スピーチの流動性や一過性を定形化してしまうという一面も確かにありますね。

また原稿にすると、頭の中でその文章をなぞって、まるで原稿を読み上げているような不自然な口調になることもあり、聞く人に対して訴求力が落ちることにもなります。

当然、原稿を作らず「思っていることをそのまま話す。」のが理想ではあります。

ではなぜ原稿を作るのか。

スピーチ初心者は、「話すこと」のトレーニングが不足しています。「話すこと」に成熟していないわけです。

学生時代から「書くこと」を国語教育で身につけてきた私たち。

ですから話すことの基本として「スピーチの文章を作る。」ことを初歩段階とし取り入れることは効果的なのです。
書くことで頭の整理ができます。

スピーチ初心者はまず原稿づくりの労力を惜しまないことが大切なのです。

 

③実際にスピーチをする

出来上がった原稿を見ながら実際にスピーチをしてみましょう。
実際にスピーチの練習として次のようなことをチェックしたり、確認したりするとよいでしょう。

  1. 原稿を見ないで話せるように、何度も繰り返し練習をする。
  2. タイムをはかり、1分間前後で話ができるように調整をする。
  3. 録音をして、声の大きさ、速度、高さ、表現などをチェックする。
  4. 友人や家族に聞いてもらい、アドバイスを受ける。
  5. 総仕上げとして録画をして、本番通りに話をしてみる。

 

最初は時間と労力がかかります。

しかしこの作業を通して、改めて自分が何を言いたいのか、どのように表現すれば自分の思いが伝わるのかを、自問自答することで、言葉が洗練され、一本筋の通ったスピーチに変化していきますよ。

 

④即答「スピーチ」でスピーチ力を向上させる。

ある程度スピーチができるようになったら、即答スピーチ・トレーニングをやってみましょう。
その場で「テーマ」を決定し、頭の中でまとめ、1分間のスピーチを行うというものです。

これも繰り返し行うことで、わかりやすい構成、時間配分、自分らしい表現方法などを磨くことでできるようになりますよ。

 

【あがり症を克服】働きやすいバイトと克服のための10のテクニック

2017.02.21

 

7.話し上手になるためのコツは・・・

話し上手になるための一番大切な「コツ」は、難しいことでも、「誰にでもよくわかるように話しをすること」ができるということです。

そのためには自分の「話し言葉」を磨いていく必要がありますね。

上述で紹介したことももちろんですが、新聞や雑誌で情報を知ること、読者で表現や語彙をも身に付ける、講演会やシンポジウムで様々な考え方や意見を聞き、様々なものの見方を習得する、たくさんの人と交流して会話のキャッチボールを楽しむ、分からないことは辞書を引く、質問する・・・・。

あなたの前向きな興味や関心が、あなたを「話し上手」にする一歩に繋がると言えると思います。

 

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